研究課題/領域番号 |
18K10029
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研究機関 | 八戸学院大学 |
研究代表者 |
吉田 稔 八戸学院大学, 健康医療学部, 教授 (80081660)
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研究分担者 |
佐藤 雅彦 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20256390)
李 辰竜 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80581280)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水銀蒸気 / メチル水銀 / 複合曝露 / 神経行動毒性 / 成長期 / マウス |
研究実績の概要 |
近年、金鉱山や水銀鉱山周辺の土壌から無機水銀に加えて、穀物中に高濃度のメチル水銀が検出されたことから、魚介類摂取以外にも穀類からのメチル水銀曝露が深刻な問題となっている。しかしながら、発育期に低濃度の水銀蒸気やメチル水銀に複合曝露うけた場合、神経行動にどのような影響を示すかについては知られていない。本研究の目的は水銀に対する感受性の高い発育期において環境からの水銀蒸気と食事からのメチル水銀による複合水銀曝露が神経行動機能へどのような影響を及ぼすかを明らかにする。出生後から雌性マウスに低濃度の0.1mg/m3水銀蒸気(Hg0)と5 ppm メチル水銀(MeHg)の複合曝露を12週齢まで行った。17週齢に達したときにオープンフィールド(OPF)試験、受動回避反応(PA)試験を実施した。OPF試験の自発運動量はHg0+MeHg曝露群で対照群に比べ有意に亢進していたが、Hg0曝露群とMeHg曝露群では対照群との間に差異は認められなかった。PA試験では訓練試行では対照群と各曝露群との間に回避反応時間に差異は認められなかった。保持試行ではHg0+MeHg曝露群は対照群に比べ回避反応時間は有意(p<0.05)に短縮したが、Hg0曝露群とMeHg曝露群では対照群との間に差異は認められなかった。曝露終了後の臓器中水銀濃度はHg0+MeHg曝露群の脳内水銀濃度はHg0曝露群やMeHg曝露群に比べ高値を示し、大脳ではHg0曝露群の約2.2倍、MeHg曝露群の約1.5倍高値を示した。またた。小脳でもHg0+MeHg曝露群はHg0曝露群の約1.6倍、MeHg曝露群の約2.6倍といずれも有意に高値であった。以上の結果より、発育期におけるHg0とMeHgの複合曝露はHg0やMeHgの単独曝露に比べ、脳内水銀濃度は高く、しかも神経行動機能に影響があることが明かとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
成長期のおける水銀蒸気とメチル水銀蒸気の複合曝露実験は野生型マウスについては行うことが出来たが、水銀に対しより感受性が高いメタロチオネインノックアウトマウスへの曝露実験を行うことが出来なかった。その理由として、昨年度の多数のメタロチオネンノックアウトマウスへの複合曝露実験を行ったさい、曝露中に多くのマウスを死亡させたため、今年度の実験に供するだけのマウスの数を確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は成長期に複合曝露をうけたマウスの加齢による影響を調べるとともに、性差の相違による複合曝露に対する感受性比較を行う。またメタロチオネンノックアウトマウスの数が揃ったら再度、複合曝露実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の研究予定の中、複合曝露による神経行動毒性に対する性差の感受性の相違や水銀に対する感受性の高いメタロチオネンノックアウトマウスを用いての実験が出来なかった。今年度、これらの実験を行うための使用する予定である。同時に昨年度の延長線にある加齢の影響についても行う予定となっている。
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