研究課題
一般的に農薬は標的害虫以外の生物には安全とされているが、今までの研究によって従来の農薬は標的害虫に特異的ではなく、ヒトや生態系に対しての毒性が指摘されてきた。新しい農薬であるリアノジン(ジアミド)系農薬は、従来の農薬とは全く作用点が異なり、標的害虫のリアノジン受容体(RyR)に対するアゴニスト作用によって強い毒性を発揮し、使用が拡大している。しかし、最近、ヒトで房室ブロックなどの健康被害例が報告され、実験動物においてもリアノジン系農薬投与によって筋や血液系に関連する症状を引き起こす事がわかってきた。さらに、哺乳類のRyRは神経系や生殖器系などの多臓器にも発現している事から、広範な障害を引き起こす可能性が示唆されている。しかしながら、性成熟前後の脳や精巣にリアノジン系農薬がどのような影響を与えるかについて検討した報告はほとんどない。平成30年度は性成熟期前の雄マウスにリアノジン系農薬を投与する前段階として、性成熟後の10週齢ICR雄マウスにリアノジン系農薬であるフルベンジアミド(無毒性量の10倍量および1倍量/day)を30日投与した所、体重や精巣重量はコントロール群に比較し実験群では変化がなかった。そこで、平成31年度は精巣の分子生物学的検討をRealtime PCRで行った。コントロール群に比較し実験群ではテストステロン合成関連酵素であるCyp11aやCyp17aが有意に低下していた。また、リアノジン受容体(RyR)も精巣に存在している事がRealtime PCRにて確認された。さらに、平成30年度でフルベンジアミドが実験群だけでなくコントロール群にもフルベンジアミドが検出された事から、平成31および32年度は環境中のフルベンジアミドの測定を行った所、低濃度であるが、神奈川県の河川や岐阜県のため池中にも流出している事がわかった。
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Medicine
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