10週齢のWKY(正常血圧)、SHR(高血圧)、SHRSP5/Dmcr(高血圧)にcontrolまたはHigh-fat-cholesterol(HFC)飼料を8週間摂取させ、採取した肝臓サンプルのホモジネートを用い、プロテオーム解析を行った。その結果、炎症・線維化関連マーカー及びコレステロールから胆汁酸異化・排泄系に差を認めた。 これらの関連マーカーの遺伝子発現量を定量リアルタイムPCR法や蛋白発現をWestern Blot法を用い解析した。HFC摂取による肝炎・線維化の病理学的評価はWKY(線維化なし)<SHR(線維化は認めるが、広範壊死を認めない)<SHRSP5/Dmcr(広範壊死を伴う線維化)であった。その結果、蛋白発現量については肝臓から胆管への胆汁酸排泄トランスポーターのBSEPの発現量は、高血圧群のSHR及びSHRSP5/Dmcr群でHFC摂取により発現が低下していたが、WKYでは低下傾向を示したが差がなかった。また、肝臓から血中へのグルクロン酸抱合が関与する胆汁酸排泄トランスポーターMRP3については、SHRSP5/Dmcrでのみ発現が増加した。またこれらを制御する核内受容体PXR及びCARの発現はHFC摂取により高血圧群のみ低下していた。mRNA発現量では、肝線維化マーカーのTGFβ1、αSMAはHFC摂取により3群とも増加していたのに対し、COL1A1およびその制御因子であるVDRは線維化の重症度に伴いその発現が増加していた。 以上の結果から、肝臓内への胆汁酸の増加が壊死・線維化へ進展することが先行研究同様確認され、高血圧の存在が胆汁酸排泄の遅延などに関与し、その増悪因子の1つであることが判明した。
|