高吸水性ポリマーのうち、市販の8種の物質を購入し、これまでに、吸入性粒子の発生、発生した粒子の化学組成、吸水能力を測定した。また、その中で最も吸水能力の高いポリマーを選定し、Fisher系雄性ラットに対して、1日6時間、5日間の短期吸入曝露試験を行った。装置は、陰圧式の粒子発生装置とサイクロンを用いて、有機粉じんの許容濃度に近い2.5±0.8mg/m3の濃度で吸入性粒子を発生させ、吸入曝露を行った。対照群として清浄空気中で同様にラットを飼育した。3日目、1か月目に対照群、曝露群ともに各10匹の解剖を行い、各群5匹は気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、回収したBALFにおける好中球数、炎症性サイトカインなどを測定し、また残りの各5匹の肺は病理組織診断用の処理を行った。 昨年度は3日目の結果について報告したが、今年度は、3日目の結果の再検討を行うとともに。測定項目を増やして検討を行った。その結果、曝露後3日目、1か月目のラットの体重および肺重量は対照群と比較して変化はなかったが、曝露後3日目にはBALF中の好中球数、炎症性サイトカイン(CINC-2)が有意に増加していた。病理組織はマクロでは大きな変化はなかった。3日目には有意に上昇していたBALF中の好中球数、CINC-2は1か月目には正常に戻っており、1か月目の肺の病理組織にも特別な変化は認められなかった。 本試験の5日間の短期吸入曝露試験では、曝露後3日目の肺に軽い炎症が認められたが、1か月目にはこの変化は正常に戻っていた。この結果から、本試験の濃度、期間において高吸水性ポリマー粒子の吸入曝露による肺への影響は少ないと考えられるが、今回の短期吸入曝露試験では肺に侵入した粒子の量は多くないと考えられるため、この粒子の有害性をより正確に評価するためには、もう少し長期もしくは高濃度の吸入曝露試験が必要と考えられた。
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