研究課題
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤バロキサビル マルボキシルは、日本国内で開発された抗インフルエンザ薬で、世界に先駆けて日本で承認され、その後、70ヵ国以上で承認されている。バロキサビル マルボキシルの臨床試験では、薬剤感受性が低下した耐性変異ウイルスが検出されており、耐性変異ウイルスの発生状況を迅速に把握し、自治体および医療機関に速やかに情報提供することは公衆衛生上極めて重要である。そこで、バロキサビル マルボキシルに対する耐性変異ウイルスの検出系を構築し、耐性変異ウイルスの監視体制を確立するのが本研究の目的である。本年度は、新型コロナウイルス感染症の流行拡大以降、3シーズンぶりに国内でインフルエンザの流行があったが、流行の規模は例年と比べて4分の1程度にとどまった。そこで、A型・B型インフルエンザウイルスに加えて、人獣共通感染症を引き起こすと考えられているC型・D型インフルエンザウイルスについても、本研究で開発したFocus reduction assayを応用し、代表株に対するバロキサビル マルボキシルの有効性を評価した。また、世界保健機関(WHO)の専門家グループと協力し、世界規模でのバロキサビル マルボキシル耐性ウイルスの監視を継続して実施した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症の流行拡大以降、日本国内ではインフルエンザの流行が見られなくなったため、解析の対象となるインフルエンザウイルスの数が極めて限定的であったが、令和4年度には3シーズンぶりに国内でインフルエンザの流行があり、新型コロナウイルス感染症の流行以前には及ばないものの、例年の4分の1程度の数のインフルエンザウイルスを収集し、解析することができた。
海外では、新型コロナウイルス感染症対策の緩和に伴って、令和4年度にはインフルエンザウイルスの検出報告数が新型コロナウイルス感染症の流行以前と同程度またはそれ以上に増加した国が多く、日本国内においても3シーズンぶりにインフルエンザの全国的な流行が見られた。今後は日本国内においても、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行による感染症対策のさらなる緩和に起因して、インフルエンザの流行規模が拡大する可能性が高い。そこで、世界保健機関(WHO)の専門家グループとも協力し、国内外のインフルエンザウイルス検出状況について迅速に情報収集し、耐性ウイルス監視体制の強化を行う。
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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