研究実績の概要 |
我々は、複数の栄養素摂取量を用いて炎症性に関する食事の質を総合的に評価する指標のひとつであるdietary inflammatory index (DII)を測定し、食事由来の炎症と胃がん、肺癌がんリスクとの関連を症例対照研究にて評価した。対象者は、愛知県がんセンターを受診した、1375名の胃がん患者と性、年齢を適合させた1942名の非がん患者、1375名の肺がん患者と性、年齢を適合させた1395名の非がん患者である。DIIスコアは、自記式食物摂取頻度調査票から推定した主要栄養素および微量栄養素量に基づき算出し、さらに胃がん、肺癌それぞれコントロール群の分布に基き四分位数に分類した。DIIの四分位を暴露、胃がんならびに肺がんをアウトカムとし、条件付きロジスティック回帰モデルを用い交絡要因で調整したオッズ比と95%信頼区間(CI)を推定し、関連を評価した。 DII高値と胃がんがんリスクならびに肺がんリスクとの間に関連は認められなかった。乳がんと大腸がんの症例対照研究は現在実施中である。 次に、1357名の頭頚部・食道がん患者と性と年齢を適合させた1942例の非がん患者を対象に、DIIと関連のある6つの炎症性サイトカインIL-1β, IL-4, IL-6, IL-10, TNF-α, CRP等のサイトカイン遺伝子多型のうち、がんリスクとの関連が報告されている多型を選定した。GWASレベルで胃がんリスクとの関連が報告されたrs1143627(IL-1B)を含め12遺伝子多型を選定した。rs1143627をはじめ選定した遺伝子多型と頭頚部・食道がんリスクとの間に統計学的有意な関連は認められなかった。さらに、DIIと遺伝子多型との交互作用を評価したが、頭頚部・食道がんリスクにおいて統計学的有意な交互作用は認められなかった。今後、胃、肺、乳、大腸がんの症例対照研究を実施する。
|