研究実績の概要 |
ピコルナウイルス科に属するパレコウイルスA-3型(PeV-A3)について当所で検出された神経症状を有する患者からの検出株の解析を進めている。 1.HeLa細胞で分離された神経症状を有した患者由来のPeV-A3分離株(7株)、有しない患者由来の分離株(1株)計8株を各種培養細胞(Vero,RD-A,BGM,LLC-MK2,CaCO2)に接種して、ウイルスの増殖性を検討している。Vero細胞では全ての株で明らかな細胞変性効果(CPE)によりウイルス分離が観察された。LLC-MK2細胞では初代培養では明らかなCPEは観察され無いが、接種2週間後の培養上清では全例ウイルス遺伝子が検出された。BGM細胞、CaCO2細胞では神経症状を有した患者由来の別々の2株がCPEを伴い初代培養でウイルスの増殖が確認された。PeV検出用リアルタイムPCR の系を整えたので、今後はウイルス株による培養細胞での増殖能力の違いを定量的に測定する予定である。 2.ウイルス分離株77株について、全ウイルス構造蛋白領域の塩基配列(2,313bp)および推定アミノ酸配列(771aa)による分子系統樹解析を行った。神経症状の有無による分離株の系統樹解析による特徴は見られなかった。海外の登録株を追加しさらに解析する。 3.人獣共通感染症の可能性解析のため、愛玩動物(イヌ90検体、ネコ6検体)、野生動物(イノシシ56検体、シカ、カモシカ36検体)の糞便検体を用いパレコウイルスの遺伝子検出を実施した。結果はすべて陰性であった。
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