研究実績の概要 |
病原体検索検体からパレコウイルスA3型(PeV-A3)の分離検出を継続してきた。2022年度は約500検体を対象としたが、1例のみ検出された。1999年~2022年度に検出されたPeV-A3検出株95例は、ウイルス構造遺伝子領域の系統解析の結果2つのグループに大きく分かれていた。そのうち14例は運動機能障害等を伴う神経症状が報告されていたが、系統解析では神経症状の有無によるPeV-A3株の特徴は認められなかった。分離株の細胞指向性や増殖性を比較する目的で神経症状有由来株4株、無2株(計6株)を9種類の培養細胞(HeLa,LLC-MK2, Neuro2A,BGM,BSC-1,SH-SY5Y,CaCo2,Vero,RD-A)にMOI 0.001で接種し、2週間の経時的変化を細胞変性効果を観察すると同時に培養上清を回収し、リアルタイムRT-PCR法によるPeV遺伝子量を計測し検討した。HeLa,LLC-MK2,CaCo2細胞では6株とも経時的に増殖が認められたが、神経芽細胞腫由来細胞のNeuro2A,SH-SY5Yまた腎臓上皮細胞であるVero細胞では神経症状有1株で、感染及び増殖が認められない株が存在した。PeV-A3株間でも病原性の差により細胞指向性が異なることが推測された。 PeVは現在A~Fの6種に分類されヒト由来はPeV-A、動物由来はPeV-B~Fとされている。研究計画当初、人獣共通感染症の可能性を推測していたので284件の動物糞便(イヌ、ネコ、イノシシ、カモシカ)からPeV遺伝子の検出を試みたが、全て陰性であった。 実験動物へのPeV-A3接種:乳のみマウスに当所で分離した複数のPeV-A3株を接種し、4週間観察したが発症したマウスはなかった。一方同じピコルナウイルス科に属するA群コクサッキーウイルス6型接種では、致死感染がみられLD50等による株間の相違を認めた。
|