研究実績の概要 |
MAC症患者のいない246家庭の浴室から分離したM. avium subsp. hominissuis 64株を用いて、主な抗酸菌治療薬9薬剤に対する最小発育阻止濃度 (MIC)を測定した。比較対象として、ヒト臨床分離株95株とブタMAC症由来株18株を用いて、同様にMICを測定した。 臨床分離株の多くがClarithromycin, Rifampicin, Levofloxacinへの耐性を示したのに対して、浴室環境分離株およびブタ由来株ではごく一部の株を除いてすべて感受性であった。M. avium subsp. hominissuisはこれらの薬剤に対して自然耐性を示さないことが確認された。一方、多剤併用療法での使用が推奨されているEthambutolについては、臨床、浴室、ブタ由来株すべてにおいてほとんどの菌株は耐性であった。すなわち、Ethanbutolに対する自然耐性が確認された。また、本年3月にリボソーム化吸入剤がMAC症治療薬として承認されたアミカシンについては、全ての分離由来間でMICに有意差は認められなかった。臨床株における耐性化は進んでおらず、MAC症治療の効果が期待できる。 M. aviumのキノロン耐性へのgyraseの関与については未だ明確な結論は得られていない。我々は今回、種々のgyrA変異保有株を用いてフルオロキノロン4剤(MFLX, CPFX, STFX, LVFX)へのMICを測定した。その結果、gyrAの95番目のアミノ酸残基の置換とフルオロキノロン耐性との関連性を明らかにした。中でもグリシン、チロシンへの置換はMICを大きく上昇させることが分かった。
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