研究課題/領域番号 |
18K10042
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川野 佐智子 (伊藤佐智子) 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (90580936)
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研究分担者 |
荒木 敦子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 准教授 (00619885)
山崎 圭子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (60732120)
須山 聡 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (70758581)
岸 玲子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, センター特別招へい教授 (80112449)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胎児期曝露 / POPs / 抗甲状腺抗体 / ADHD / 出生前向きコホート |
研究実績の概要 |
甲状腺ホルモン合成には、主に土台となる蛋白質のサイログロブリン(Tg)とヨウ素化酵素である甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)が大きく関わっている。橋本病等の自己免疫性甲状腺疾患では、これらの自己抗体である抗TPO抗体(TPOAb)、抗Tg抗体(TgAb)が産生され、自己の甲状腺細胞を攻撃することで甲状腺ホルモン産生が低下する。そこで本研究では出生前向きコホート「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ(以下、北海道スタディ)」を用いて、妊娠中のPOPs曝露が母児抗甲状腺抗体値の攪乱により甲状腺ホルモン濃度を変化させ、児のADHD症状へ影響するかを明らかにすることで、近年増加傾向にあるADHD症状のメカニズム解明への糸口を示し、予防対策および治療法への道を切り拓くことを目的とする。母体血および臍帯血中甲状腺ホルモンTSH、FT3、FT4値を測定している母児約1000組(2000名)を対象としてH30年度は、母児約1000組(2000名)の妊娠中母体血および臍帯血中TPOAb、TgAb濃度をELISA法にて測定した。この結果、母体血中のTgAb、TPOAbの中央値はそれぞれ15.0、6.062 IU/mLであった。また、臍帯血中のTgAbは38.0 IU/mL、一方TPOAbは7%の検体からのみ検出された。これらのデータを用いて、既存のコホートの母体血中の有機フッ素化合物(Per- and poly-alkylfluorosubstances: PFAS)濃度との関連を解析したところ、調整後のモデルにおいても母体血中PFASとTPOAb、TgAbは負の相関を示した。一方、母体血中PFASは臍帯血中FT4と正の関係、TgAbとは負の相関を示した。加えて男児では、母体血中PFOSはTSHとの正の相関を、PFTrDAはTgAb都の負の相関を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた母児600組のみならず2019年度に計画していた400組も含めて、約1000組の母体血および臍帯血中TPOAb、TgAb濃度の測定を終了させ、母体血中PFAS11化合物濃度との関連解析を終了した。
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今後の研究の推進方策 |
母児抗甲状腺抗体値および甲状腺ホルモン値とADHD症状の関連検討を行う(実施者は伊藤:代表者、須山、山崎:分担者)。すでに回答を得ている1000人のADHD-RS調査票によるスコアを算出し、母体血中および臍帯血中TPOAb、TgAb濃度の、ADHD傾向に与える影響を、ADHDの症状スコアごとに検討する。加えて、母体血中PFASによる母児抗甲状腺抗体値へ与える影響が、甲状腺ホルモン値およびADHD症状へ与える影響を検討する(実施者は伊藤:代表者、須山、山崎:分担者)。母体血中PFAS濃度が母児TPOAb、TgAb値およびTSH、FT3、FT4値を攪乱し、児のADHD症状へ与える影響を、共分散構造分析(Structural Equation model、Path Analysis)による解析で明らかにする。POPsのPFAS、すでに取得済の母妊娠中に得た質問紙調査票や診療記録のデータを用い、生活習慣、既往歴、母の出産時年齢、妊娠中の喫煙・飲酒、母の学歴、世帯収入といった環境要因も考慮する。さらには、POPsとしてPFASのみならず、別経費で測定中の母体血中ダイオキシン類、PCB、OH-PCBの母体血中濃度についても、本研究で得られたデータを用いて児のTPOAb、TgAb値、TSH、FT3、FT4値、および児のADHD症状へ与える影響を、共分散構造分析(Structural Equation model、Path Analysis)による解析で明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた日本衛生学会参加を次年度に変更したため。次年度の学会参加費とする。
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