研究課題
甲状腺ホルモン合成には、主に土台となる蛋白質のサイログロブリン(Tg)とヨウ素化酵素である甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)が大きく関わっている。橋本病等の自己免疫性甲状腺疾患では、これらの自己抗体である抗TPO抗体(TPOAb)、抗Tg抗体(TgAb)が産生され、自己の甲状腺細胞を攻撃することで甲状腺ホルモン産生が低下する。そこで本研究では出生前向きコホート「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ(以下、北海道スタディ)」を用いて、妊娠中のPOPs曝露が母児抗甲状腺抗体値の攪乱により甲状腺ホルモン濃度を変化させ、児のADHD症状へ影響するかを明らかにすることで、近年増加傾向にあるADHD症状のメカニズム解明への糸口を示し、予防対策および治療法への道を切り拓くことを目的とする。R2年度は、母児抗甲状腺抗体値および甲状腺ホルモン値とADHD症状の関連検討を行った。対象者は北海道スタディ大規模コホートに参加する2003-2005年生まれの児のうち、8歳のADHD-RSおよび、母の血中有機フッ素化合物(Per- and poly-alkylfluorosubstances: PFAS)濃度(妊娠中期)、母の甲状腺ホルモンおよび抗体(妊娠初期血中)、児の甲状腺ホルモンおよび抗体(臍帯血)データがそろう母児770組であった。兄姉の有無で層別したロジスティック解析を行ったところ、兄姉がいないグループで、PFASが高いとHyperactivity-impulsivityのリスクが有意に低かった。Mediation analysisでは、母のFT4は、PFUnDAがHyperactivity-impulsivityのリスクを下げる関係に対し、16.3%関与していることが推定されたが、他のPFASや甲状腺ホルモン、抗体では有意なMediatorは発見されなかった。
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