研究課題/領域番号 |
18K10044
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
稲寺 秀邦 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (10301144)
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研究分担者 |
崔 正国 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (90572115)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
高齢化社会を迎えたわが国では、高齢者の生活習慣病に対する「身体にやさしい」治療法の開発が求められている。死因第1位の「がん」に対しては、従来の手術・抗がん剤・放射線治療のように副作用の多い根治を目指した治療法だけではなく、「身体にやさしい」治療により、QOL(Quality of Life)を長く維持するという視点が重要である。これまでのがん治療ではがんを急性疾患とみなし、手術や抗がん剤治療は急性疾患の治療方針にならって進められてきた。すなわち肉眼的に見える範囲のがん病巣を手術により取り除き、さらに重篤な副作用が出ない限界の濃度で抗がん剤を一気に投与する。このような治療では、がんは縮小しても体力のない高齢者には副作用が強く表われるとともに、QOLの低下も著しい。高齢者のがんは長い年月を経て生じた場合が多く、慢性疾患としてとらえることができる。そのため慢性疾患に適した「身体にやさしい」治療を考える視点も必要である。 本申請研究では、生活習慣病である「がん」に焦点をあて、天然資源由来化合物を用いた高齢者にやさしい治療薬開発の基礎的研究を行った。癌の温熱治療は臨床現場で用いられる身体にやさしい治療法である。がん細胞の温熱誘導アポトーシスを増強し、細胞毒性が低い天然由来化合物のスクリーニングを培養細胞を用いて検討した。その結果、カプサイシン(capsaicin)のアナログであるノニバミド(nonivamide)の有効性を見いだした。その分子機構として、JNK 、p38経路を介したミトコンドリア-カスパーゼ系の活性化によることを明らかにした。一方、ジヒドロミリセチン(dihydromyricetin)はがん細胞の温熱誘導アポトーシスを減弱させる効果を持つことを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者にやさしいがんの治療法である温熱療法に焦点をあて、温熱誘導細胞死を増強する天然資源由来化合物であるバイカリン(baicalin:前年度の成果)とノニバミド(nonivamide)を見いだした。さらにその作用分子機構の一端を明らかにした。一方、がん細胞の温熱誘導アポトーシスを減弱させる効果を持つ化合物としてジヒドロミリセチン(dihydromyricetin)を見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
高齢化にともないインスリン抵抗性が高まり、高血糖による糖毒性を介した合併症が生じる。例えば糖尿病性網膜症・神経症の発症・進展には、高血糖にともなう酸化ストレスが関与することが報告されている。合併症の進行防止には、血糖値の安定化だけでなく、酸化ストレスのコントロールに焦点をあてた対策も重要である。今後は、培養細胞を用いて、高血糖による酸化ストレスを検出する系を確立し、酸化ストレスを低減する天然資源由来化合物をスクリーニングする。酸化ストレスは、老化の進行に関連する可能性が指摘されており、酸化ストレスを低減する化合物を見出すことは、老化そのものに対する新たな治療法の開発に結びつく可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を効率的に使用することにより、当初見込み額より低く抑えることができ次年度の使用が生じた。余剰分については、2020年度に実験に必要な消耗品の購入費用および実験補助の謝金にあてる。2020年度も引き続き効率的に予算を使用する。
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