研究課題/領域番号 |
18K10045
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大澤 佳代 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (50324942)
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研究分担者 |
重村 克巳 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (00457102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カルバペネマーゼ / 基質拡張型βラクタマーゼ / カルバペネム耐性 / MLVA / MLST |
研究実績の概要 |
今年度はインドネシア及び兵庫県で分離された薬剤耐性菌株についての解析を行った。インドネシアでのカルバペネム耐性グラム陰性桿菌を22株分離し、これらは、Acinetobacter baumannii(n = 4)、Pseudomonas aeruginosa(n = 4)、Klebsiella pneumoniae(n = 5)、Providencia rettgeri(n = 4)であり、そのカルバペネマーゼはNDM-1(n=18,81.8%)およびIMP-7(n=4,18.2%)であった。分離された患者のうち、12人(54.5%)が重症例で3人が死亡した(死亡率13.6%)、この結果はInt J Urol.(2018)に掲載された。 兵庫県において分離されたカルバペネム耐性緑膿菌21株のうち、13株(61.9%)がメタロ-β-ラクタマーゼ陽性であり、IMP-1が 11株(52.4%)、IMP-7が 1株(4.5%)およびVIM-1が1株(4.5%)であった。これらの株の相同性をRep-PCRによる疫学解析により確認し、Int J Urol.(2019)に掲載された。また、緑膿菌感染症の一人の患者から分離された株について、2ヶ月間にわたって得られた6つの分離株の次世代シークエンスによる全ゲノム配列決定により、排出ポンプ発現および抗菌剤耐性に影響を与える2つの重要な一塩基多型(SNP)がmexRおよびgyrB遺伝子において明らかにされ、J Infect Chemother.(2019)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシアの尿路感染症患者から分離されたカルバペネム耐性グラム陰性桿菌において、カルバペネマーゼ産生22株が分離された。これらは、Acinetobacter baumannii(n = 4)、Pseudomonas aeruginosa(n = 4)、Klebsiella pneumoniae(n = 5)、Providencia rettgeri(n = 4)であり、カルバペネマーゼの種類はNDM-1(n=18,81.8%)およびIMP-7(n=4,18.2%)であった。これらはすべてコリスチンに感性をしめした。カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌を保有する患者のうち、12人(54.5%)が入院時に重症例であり、3人が死亡した(死亡率13.6%)、この結果はInt J Urol.(2018)に掲載された。 兵庫県における尿路感染症患者21人から分離されたカルバペネム耐性緑膿菌のうち、13株(61.9%)がメタロ-β-ラクタマーゼ陽性で、IMP-1が 11株(52.4%)、IMP-7が 1株(4.5%)およびVIM-1が1株(4.5%)であった。メタロ-β-ラクタマーゼ陽性分離株はMulti locus sequence typing(MLST)より主にST235として同定された。Rep-PCRによる疫学解析によりこれらの株の相同性を見出した。このうち、VIM-1を持つST235分離株が初めて発見され、Int J Urol.(2019)に掲載された。また、緑膿菌感染症の治療を受けていた一人の患者から分離された株について、2ヶ月間の6株の次世代シークエンスによる全ゲノム配列決定により、排出ポンプ発現および抗菌剤耐性に影響を与える2つの重要な一塩基多型(SNP)がmexRおよびgyrB遺伝子において明らかにされ、J Infect Chemother.(2019)に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
インドネシアでの尿から分離されたカルバペネム耐性Acinetobacter baumanii 36株を収集し、カルバペネマーゼ産生、薬剤排出ポンプ系統の解析を行う、基質拡張型βラクタマーゼ産生Escherichia coli 115株について反復配列多型解析法(multiple-locus variable-number tandem-repeat analysis; MLVA法)により、細菌ゲノムにおける単一配列のタンデムリピート領域数の違いを基に菌株を型別し、その違いを確認する。その他チキン由来のEscherichia coli 56株、Salmonella enterica 76株および水由来の細菌の薬剤感受性試験を進めており、詳細な解析を行う予定である。 さらには、新規合成薬剤について、様々な薬剤耐性細菌への効果を検討中である。
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