研究課題/領域番号 |
18K10047
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
大津山 賢一郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10432741)
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研究分担者 |
常岡 英弘 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40437629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 猫ひっかき病 / ワクチン / Bartonella henselae |
研究実績の概要 |
Bartonella hensela(B. henselae)は猫ひっかき病 (Cat scratch disease;CSD) の原因菌である。本症は病態が多彩であり、我が国のペットブームの中、感染予防の重要性が増している.しかしながら、予防策の1つであるワクチンは皆無でありその開発が求められている。さらに、ヒトへのワクチンは臨床実験を行う上で実用化までに時間を要し、公衆衛生的にも万人が摂取する機会が望めない。そこで、B. henselaeの保菌動物であるネコへのワクチンを開発することとした。そのためには本症のIgM抗体解析。さらにはこれに基づく本症のとりわけ感染初期に出現するIgM抗原蛋白質解析が重要である。本研究では、B. henselae IgM抗体についてCSD(疑)患者血清と健常人血清のウエスタンブロット(WB)法による解析を行い、IFA法の成績と比較し、感度・特異度の再検討を行った。さらにこの結果に基づき、先行研究により特異抗原として示唆されたCSD主要バンド(8-10kDa,31-35kDa,70kDa) の内、出現率が最も高い10kDa付近の蛋白質を解析した。B. henselae をSDS-PAGE後,銀染色し8~10kDa付近のバンドを切り出し、質量分析を行った。結果12種の遺伝子が得られ、そのうちの8種(8,9,10,20,26,38,44,58kDa)の遺伝子の蛋白質合成を行った。しかし今回解析した8種の遺伝子はCSD 患者血清のIgM抗体に特異的な抗原ではなかったことが示唆された。しかしながら、残りの3遺伝子への解析と蛋白質合成法を変えることによりこれらの遺伝子に期待が掛かる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、CSD患者血清中のIgMと反応する抗原をウエスタンブロットで解析すると、主要バンドとして8-10kDa,31-35kDa,70kDaがある.その内,出現率が最も高い10kDa付近の蛋白質を質量分析により解析した.結果12種の遺伝子が得られ,そのうちの8種(8,9,10,20,26,38,44,58kDa)の遺伝子の蛋白質合成を行ったが、CSD抗原としては認められなかった.しかしながら、残り3つの解析が残っていることと、今回分子生物学的手法により無生物によるタンパク質合成を行ったため、この手法では作りきれなかったタンパク質がある可能性があるからである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は残り4種(6,17,18,99kDa)の遺伝子解析,その他の主要バンド(31-35kDa,70kDa)の解析,および大腸菌を用いたタンパク質合成を行い、B. henselae特異IgM抗原蛋白質の同定を行う必要がある.また、同定ができた場合感染実験として感染可能な齧歯類であるマウスに感染させることにより、その効果を確かめたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において抗原性を高めるために、ベロ細胞やマウスに感染させるため、培地や感染施設使用料等に使用するため。
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