研究課題/領域番号 |
18K10047
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
大津山 賢一郎 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10432741)
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研究分担者 |
常岡 英弘 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授(特命) (40437629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 猫ひっかき病 / ワクチン / Bartonella henselae |
研究実績の概要 |
猫ひっかき病(CSD)は原因菌であるBartonella henselae(B.henselae)による人獣共通感染症であり、臨床症状は多彩である。ペットブームの中ペットとして飼われている猫は1000万頭である。B.henselaeはノミが媒介する事が知られており、我々はこれまで約10%の猫にB.henselaeが感染しているのみが検出された。したがって、100万頭の猫にこの感染したノミがいることになる。CSDは決して稀では無く、身近な感染症である事が言える。 CSDの診断には血清学的手法の一つである間接蛍光抗体法(IFA)がゴールドスタンダードである。しかしながら、特異度は高いものの感度が低いことが難点である。 これまで、CSD患者血清中のIgM抗体のウエスタンブロット解析では、10kDa、30kDa、70kDa付近に検出バンドが見られ、これらのバンドのいずれかが検出されれば、ほぼ100%CSDであると診断可能である。一方健常人血清では検出バンドは見られない。したがって、感度および特異度が非常に高いことを研究代表者は報告している(J Clin Microbiol. 2017 Dec 26;56(1):e01322-17.)。 我々の研究目的は猫に対するCSDワクチンの開発を目指すものである。患者血清を用いたウエスタンブロット解析から得られたバンドを、1次元電気泳動によるSDS-PAGEのバンドと照合し、そのバンド中のタンパク質抗原を抽出後、質量分析を行っている。10kDaの抗原性をウエスタンブロットで解析を行なったが、現段階ではその抗原性の確認はできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々の研究目的は、CSD抗原を同定することにより、そのリコンビナントタンパク質抗原を作成し、IgM-ELISAおよび猫に対するCSDワクチンの開発である。研究代表者らはCSD患者血清を用いて原因菌であるB.henselaeとその血清中のIgM抗体との反応をウエスタンブロットで検出した。まず10kDa、30kDa、70kDa付近に検出バンドのうち10kDa付近の抗原を1次元電気泳動で抽出し質量分析を行った結果12種類の抗原の候補が得られた。これらの抗原を作成し、10kDa付近にバンドが見られた患者血清を用いたウエスタンブロット法で検証を行った。作成したリコンビナントタンパク質はすべてその抗原性を示す結果が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
B.henselaeの2次元電気泳動では全菌を用いる為分離度が低いことから1次元電気泳動から質量分析にかけるための抗原タンパク質候補を抽出している。しかしながら同じ分子量のタンパク質が含まれている為、質量分析を実施すると抗原候補が複数存在する。検出されたすべての抗原を作成したものの、その抗原性を確認することはできなかった。そこで同じ分子量の抗原を排除するためにCSD患者血清を用いた抗IgM抗体で免疫沈降を現在行っており、質量分析を実施しデータ解析後その抗原性をウエスタンブロットで確認する。 確認できたお抗原はI.ワクチンは細胞そのものに毒性を示してはならない。そこで、マウスマクロファージ細胞株RAW246.7で合成タンパク質の生存率(死亡率)の濃度依存性及び時間依存性を確認する。細胞の生存率(死亡率)をMTTアッセイによって確認する。マクロファージであるRAW246.7は貪食能を持つ抗原提示細胞であり、抗体を作る足がかりとなる細胞のため使用する。II.I.の確認後、抗体形成の有無を確認するため、マウスに直接合成タンパク質を接種し安全確認をする。マウスkgあたりの合成タンパク質量を決定し、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射のうち最も血清中の抗体価が多い接種法も同時に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りであるが、抗原同定に至っていないため抗原となる蛋白質合成を多く作る事ができなかったため。
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