本研究目的は、ネコに対するワクチンを開発し、ヒトへのバルトネラ感染(CSD)を防ぐことである。わが国でCSD鑑別診断が行えるのは研究代表者らのグループのみである。ペットブームと重なるようにCSD症例は急増しており、飼い猫にバルトネラ感染が広まっていることが危惧される。本研究の独自性は、ヒトに対するワクチンではなく、感染源のバルトネラ保菌動物であるネコに対して開発する点にある。次に本研究の創造性は、バルトネラ感染防御抗原を同定し、そのリコンビナント蛋白質をワクチンに用いる点である。従来のワクチンの多くは不活化ワクチンか生ワクチンである。本研究では菌体の抗原蛋白質成分のみを合成あるいは精製するため、管理や操作方法が簡便である本研究が成功すれば、世界に先駆けたCSDの予防対策になること期待される。 本研究では、サルコシン処理後150~300mM NaClで精製した分画の蛋白質の質量分析を行った。今回簡易的に行くため、発現ベクターを用いたタンパク質合成ではなく、候補遺伝子(論文投稿のため未記載)を用いて無細胞蛋白合成を行い、IgM-WB陽性者の45%にみられる蛋白抗原(31-35kDa)の同定を行った。IgM-WBにて30kDaに反応がみられる患者血清を用いたIgM-WBを行った。本合成蛋白質についてCSD患者血清15例と健常人血清7例でIgM-WBを行った。CSD患者血清では46.6%(7/15)に陽性バンドが見られたが、健常人血清では全例検出認められず、本蛋白の抗原性が確認できた。CSD患者血清中のIgM抗体に特異的なB.henselae抗原を同定することができた。今後同様な手法により8-10、31-35、42-45kDaおよび70kDaに相当する4群の蛋白質抗原を同定することが可能となり、高感度IgM-ELISA開発が期待される。
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