研究課題/領域番号 |
18K10049
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
島ノ江 千里 佐賀大学, 医学部, 特任准教授 (10734064)
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研究分担者 |
松本 明子 佐賀大学, 医学部, 講師 (10330979)
田中 恵太郎 佐賀大学, 医学部, 教授 (50217022)
西田 裕一郎 佐賀大学, 医学部, 講師 (50530185)
原 めぐみ 佐賀大学, 医学部, 准教授 (90336115)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コルチゾール / コルチゾン / 11βHSD / コホート研究 / メタボリックシンドローム / 自覚ストレス / 抑うつ / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
本研究は、エピゲノムワイド関連解析(EWAS)により、精神ストレスが疾患にリンクするメチル化を見つけ、バイオマーカーとの関連により、疾患メカニズムを説明する、あるいは疾患を予測する生理活性物質を明らかにすることを目的としている。 2019年度は測定したバイオマーカーのデータクリーニングとマーカー特性の詳細な解析を実施し、精神ストレスや疾患とグルココルチコイド活性との関連について検討した。
日本人一般住民8280名のコホート研究の参加者の凍結保存尿のグルココルチコイド類の測定値について解析した結果、コルチゾールとコルチゾンの相関は高く、11βHSDの活性指標でありグルココルチコイド活性を反映するバイオマーカーであるコルチゾール/コルチゾン比は、採尿時間、性、年齢、睡眠時間、喫煙、身体活動量などの生活習慣やBMI,糖尿病、脂質異常症、高血圧などの身体健康状況との関連が示された。精神ストレスと比の正の関連は、他の関連因子からも独立した関連であった。一方、興味深いことに抑うつとこの比やコルチゾールには有意な関連が示されなかった。 バイオマーカーと疾患との関連についての検討では、コルチゾール/コルチゾン比は、HDL-コレステロールと正の関連(Ptrend <0.001)、腹囲、中性脂肪、HbA1cとの負の関連が示された (Ptrend <0.001)。したがって、精神ストレスとメタボリックシンドロームとの関連に、グルココルチコイドや11βHSDなどの活性化が介在している可能性があると考えられる。 現在、精神ストレスと関連するDNAメチル化について解析をすすめているが、このバイオマーカーと関連するDNAメチル化についても最終年度に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コルチゾール/コルチゾン比とメタボリックシンドロームに有意な関連が示されたことから、コルチゾール/コルチゾン比が精神ストレスと疾患の関連メカニズムに介在する可能性が示唆された。このことから、2019年度に予定されていた精神ストレスと関連するDNAメチル化を検討するEpigenome-wide association study(EWAS)をPendingし、最終年度(2020年度)に本バイオマーカーと関連するDNAメチル化を精神ストレスのDNAメチル化とともに検討する計画に変更した。
したがって、当初本年度に実施を予定していた精神ストレスのEWASについては、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(2020年度)は、精神ストレスと関連するDNAメチル化を確認するために、ベースライン調査参加者(約12,000人)からのランダムサンプル512例のDNAメチル化解析データ(Infinium Methylation EPIC BeadChipを用いた約84万ヶ所のCpG sites)および過去に行った脳梗塞症例対照研究391例のDNAメチル化解析データ(Infinium HumanMethylation450 BeadChipを用いた約47万ヶ所のCpG sites)を用いて、EWASを行う。これによりEWASで見つけたメチル化部位と疾患が関連するかについて検討する。
なお、本年度(2019年度)にコルチゾール/コルチゾン比と精神ストレスとの正の関連を見つけたことから、本マーカーについてのEWAS解析も同様に実施する。なお、それぞれのデータ単独では、統計学的に有意に精神ストレスと関連するDNAメチル化を検出できない場合には、両方のデータで共通して測定されている約44万ヶ所のCpG sitesについてメタ解析を行なう。その結果、精神ストレス、およびコルチゾール/コルチゾン比と示唆的な関連(P < 1e-5)を示すシグナル(CpG sites)を得た場合には、本研究を基盤として、見つけたシグナルについて、追加解析(パイロシークエンス法)による再現性を確認する研究へとさらに展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定であったDNAメチル化解析を次年度に実施する計画へと変更した。したがって、EWAS解析後に行う可能性がある追加解析に係る人件費、消耗品等の費用を次年度に持ち越したことが主な理由である。 また、新型コロナウィルスの影響で、参加予定であった国際学会が最終年度(2020年度)に延期されたため、成果発表のための研究費を次年度に繰り越した。
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