研究実績の概要 |
当初、上五島地区のATL患者の地域特性を明らかにするために, HTLV-1検査データベース内のHTLV-1陽性者から発症したATLを特定し, 性別・出生年別発症率を求める予定であった。2018年度は3回上五島病院を訪問し、カルテを参照したが、カルテに詳細な記載がないことや、古い年代の患者では紙カルテの入手が困難で正確なHTLV-1データベースがないことがわかった。 2019年度はmiRNA解析を行ってきた。HTLV-1キャリアからATL進展時の経時的血清マーカー変動を明らかにするために、長崎大学にある少数の検体を用いて網羅的にmiRNAを解析した。長崎大学病院検査部に保存してあるHTLV-1陰性健常者、HTLV-1キャリア、慢性型ATL、急性型ATL3 例ずつの保存血清を、東レ株式会社研究所に送付し、3D-GENEというDNAチップを用いてmiRNAを網羅的に解析してきた。血漿をTORAYの高感度マイクロアレイシステム(3D gene)にて、データベースに登録されている約2600種のmiRNAを全て測定し、網羅的に解析した。得られたデータをもとにANOVA p<0.05である miRNAを抽出し、そのうち2群間にてさらに発現量の差がp<0.05となるmiRNAを抽出し、miRNAの番号が600未満のものに絞り、検討した。miR-92,miR-19は急性型 ATL発症および慢性型ATLの急性転化の、 Let-7 familyは慢性型ATL発症および急性転化の、miR-130は慢性型ATL発症のバイオマーカーなる可能性があることがわかった。miRNAの発現異常によりATLの腫瘍化を阻害していることが考えられた。 この結果は、2020年日本病理学会総会で発表した。今後miR-92,miR-19, miR-130について、症例を増やし検討する予定である。
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