研究実績の概要 |
本研究の目的は、黄色ブドウ球菌の新型エンテロトキシン(様)遺伝子(selw, selx, sey, selz, sel26, sel27)、新規病原遺伝子について、臨床分離株における分布状況と遺伝子学的多様性、病原性との関連を明らかにすることである。今年度は北海道において分離された市中感染型MRSA(CA-MRSA)624株、S. argenteus82株を対象として、新型エンテロトキシン(様)遺伝子の分布とその多様性を解析した。検出率が最も高かったのはselw(92.9%)であり、selx(85.6%)がそれに次ぎ、seyは35.4%、selzは5.6%に検出された。sel26、sel27は検出されなかった。系統遺伝学的には、selw、selx、sey、selzは各々7、10、16、9つの亜型(群)に分けられ、selzが最も高い保存性を示した。selwの配列は最も多様性が高く、不完全な毒素蛋白をコードすると推定される偽遺伝子が10群中4群の中に検出された。高病原性のMRSA系統であるST121にはselw、selxとともに、sey、selzが高率(80%以上)に検出され、病原性の高さとの関連が示唆された。S. argenteusは3つの遺伝子型ST1223、ST2198、ST2250に分類され、selwはST1223、sey、sel26、sel27はST2250のみに、selxはST2198に有意に高率に検出された。selzはST1223とST2250ともに約3割の菌株に検出された。ST1223のみに、sebおよびエンテロトキシン遺伝子クラスターが同定された。S. argenteusでは新型エンテロトキシン(様)遺伝子の分布は遺伝子型により大きく異なることが判明した。
|