研究課題/領域番号 |
18K10057
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
矢島 美彩子 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (60443131)
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研究分担者 |
神田 輝 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (50333472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EBウイルス / ゲノム塩基配列決定 / 大腸菌人工染色体 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本人検体から得られるEBウイルス(EBV)株の塩基配列を調べ、日本人におけるEBV株の多様性を明らかにするとともに、「日本人のEBV株の参照ゲノム配列」を決定することを目的とする。本研究で得られる日本人EBV株の配列情報とデータベースに登録された情報を比較することにより、日本人のEBV株の進化的位置づけを明らかにすることが可能となる。また、本研究で得られる「塩基配列情報」と「参照配列」は、アジア地域に偏在するEBV関連疾患とEBVの多様性の関係性について検討するための重要な基礎データとなることが期待できる。
2019年度は、2018年度に引き続き、EBV関連疾患ではないEBV既感染者の摘出扁桃組織から「EBV感染リンパ芽球様細胞株(spontaneous lymphoblastoid cell line, sLCL)」の樹立を試み、新たに12例のsLCLを樹立した。CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて、sLCLからBAC(bacterial artificial chromosome)クローン化した「EBV扁桃株(無症候感染株)」の全長ウイルスゲノムDNAについて、「先進ゲノム解析研究支援プラットフォーム」の支援を受け、新たに2例の全長ウイルスゲノムDNA(約170キロベース)の塩基配列を決定した。 全長ウイルスゲノムの塩基配列を決定した計7例のEBV扁桃株について、アノテーション解析を行い、タンパク質コーディング領域を決定した。EBNA遺伝子の配列比較から、扁桃株7例のうち5例がEBV1型、1例がEBV2型、1例が型間リコンビナントウイルスであることが示された。また、いくつかのウイルス遺伝子において配列比較を行い、扁桃株においても配列多様性があることが示された。 さらに、扁桃株4例のBACクローンをHEK293細胞に導入し、扁桃株のウイルス産生を試みた結果、4例全ての扁桃株を感染性ウイルスとして再構成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに、「EBV扁桃株(無症候感染株)」の全長ウイルスゲノムの塩基配列決定とアノテーション解析を行うことができた。また、ウイルス産生量に改善の余地はあるが、クローン化した扁桃株から感染性ウイルスを再構成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、「扁桃株(無症候感染株)」とデータベースに登録されている日本由来株や他地域の株について、ウイルスゲノムおよび個々のウイルス遺伝子の分子系統解析を行い、日本のEBV株の進化的位置づけや日本株の特徴を調べる予定である。また、扁桃株再構成ウイルスを効率よく産生する系の構築も試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の研究費の一部を別財源でまかなうことができたため。次年度使用額は、2020年度に繰り越し、ウイルスゲノムのクローン化、扁桃株ウイルス再構成の条件検討などに使用する。
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