研究課題/領域番号 |
18K10067
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
井谷 修 日本大学, 医学部, 准教授 (70624162)
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研究分担者 |
兼板 佳孝 日本大学, 医学部, 教授 (40366571)
大塚 雄一郎 日本大学, 医学部, 助教 (40748399)
土器屋 美貴子 大分大学, 医学部, 助教 (20749139)
地家 真紀 (池田真紀) 昭和女子大学, 生活科学部, 講師 (20535166)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 休養 / 睡眠 / プレゼンティーイズム / 評価尺度 / 系統的レビュー / システマティックレビュー / 縦断疫学研究 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
従来「休養」が心身の健康に与える効果の研究が困難であった理由のつとして,「休養」を適切に評価できるツールが存在しなかったことがあるが,我々は本研究課題に先だち「休養」の構成要素を適切に評価できる「休養評価尺度」を新規開発していた。今年度は開発した休養評価尺度について質問項目のブラッシュアップを行った上で,最近得られた知見に基づく詳細な考察を加えて,学術論文として発表を行った。また,本研究課題の主要な計画の一つである,労働者を対象とした「休養」に関する疫学調査を実施し,新規の質の高いエビデンスを確保に努めた。本研究目的の遂行のため,実施を計画した疫学調査のデザインは縦断観察研究とし,2年前にベースライン調査を実施し,今年度はフォローアップ調査を実施し,2回の調査を実施した。すでに実施したベースライン調査では労働者における「休養」の実態と心身の健康や職務遂行能力や生活習慣について情報を収集した。具体的調査手法として,自記式質問調査調査を対象企業の従業員に配布をした上で,従業員自身に記入をしてもらった上で回収した調査票を電子データ化して統計ソフトで解析するという手順をとった。「休養」の評価方法については,今年度学術雑誌において発表した「休養評価尺度」を用いた。今年度実施したフォローアップ調査ではベースライン調査と基本的には同等の内容について調査を行い,データの収集を行った。ベースラインおよびフォローアップ調査を同じ内容で実施することにより,ベースライン調査からフォローアップ調査の間のの2年間に変化した健康状態や職務遂活習慣を把握し,これらの変化 に対して「休養」がどのように関係していたのかについて,縦断的にデータ解析を行うことが可能な状態とした。本研究課題のもう一つの計画である休養と健康に関する系統的レビューについても疫学研究と並行して実施作業を適宜進めていった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,縦断研究におけるフォローアップ調査(2回目の追跡調査)の実施を予定していた。計画立案当時の予定としては,5月~7月の実施を予定していたが,ちょうど新型コロナウイルス流行に伴う緊急事態宣言発出の時期と重なり(東京では5月25日まで宣言継続),企業における調査票を用いた調査の実施が困難となってしまったため,実施を延期せざるを得ない状況が続いていた。新型コロナウイルスの流行は当初の計画立案時には想定されておらず,調査実施協力を依頼している各企業の活動にも,外出の自粛や業務そのものの停止・従業員の休業など,多大なる影響を与えることとなり,調査のスケジュール通りの実施を見合わせなければならない事態となった。さらに,緊急事態宣言解除後も新型コロナウイルスの全国的流行が続き,企業を対象とした本調査研究は実施の延期を継続した上で,調査再開可能時期を再度検討する状況が続いていた。9月よりようやく調査を一部再開することができ,12月までの期間で予定している調査は完了することができた。その後3月までの間で調査の電子データ化,前回の調査データとの連結作業は行うことができたため,年度内に調査研究としてはスケジュールの遅れはあったものの予定していた作業は完了することができた。しかし,もう一つ実施を予定していた休養と健康に関する系統的レビューについては,本年度は本格的な実施や結果の研究発表を計画していたが,前述の調査研究のスケジュールの遅れが主な原因として,システマティックレビュー作業が当初の予定より遅れる結果となってしまう状況となった。本年度予定したシステマティックレビューのデータベース検索や抽出論文の適格性および質の評価,学術雑誌への投稿や学会発表は年度中には実施することができなかった。計画全体としてはやや遅れを生じている事になり,今後はこの遅れを取り戻すべく計画を適宜見直す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度得られた縦断的疫学データをもとに,心身の健康指標や職務遂行能力等で前後変化のあったものについて,これらの変化と休養評価尺度で評価した各種の休養要素との関連性について多変量解析等の統計手法を用いて解析を進めていく予定である。具体的には,各種心身の健康の変化指標を目的変数,休養評価尺度の点数を説明変数,従業員から得られた他の要素で重要なものを調整因子とした,多変量解析を行うことを計画している。これにより,休養を構成する各種要素と心身の健康の関係性について研究デザイン的に因果律のはっきりした解析が行える予定である。また,データ解析により得られた疫学的知見について,学術集会および学術雑誌への発表を行う予定である。更に,調査研究に協力してくれた各企業に対して,本研究で得られた知見のフィードバックを,衛生講話等の機会を通じて適宜還元していく予定である。また,やや遅れている休養と心身の健康についての系統的レビューの作業についても順次進めていく予定である。系統的レビューの作業として実施を計画しているものとしては,データベース検索として,PRISMA声明に基づき対象研究を選出を予定している。まず,複数データベース(MEDLINE, PsycINFO, Embase, CINAHL等)を用いて,本研究課題に沿って作成した検索式を用いて網羅的検索を行い,関係した論文・研究発表を幅広く選出を行うことを計画している。そして,選出した論文・研究発表について,本研究課題に合致しているのかどうかについて,予め定めた手法で(系統的に)適格性チェックを行う予定である。最終的に選出した研究について質的・量的な結合を行うと同時に,研究の個々の質的な評価も行い,先行研究の網羅的なエビデンスの統合を図る予定である。今回の実施課題で行った疫学研究と,系統的レビューの結果を統合して最終報告とする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も研究成果について発表や研究課題について関係した最新情報収集を目的とした各種学術大会への参加を予定しており,全国各地で開催される関係学術大会への参加旅費を使用予定予算として計上していた。しかし,今年度において新型コロナウイルスの全国的流行があり,更に緊急事態宣言の発令などの要因により,学術大会の中止やオンライン開催への変更が相次ぎ,現地での開催がなくなったということで,参加予定で計上していた旅費の予算を執行する機会がなくなり,その分を繰越予算として計上することになった。さらに,本年度も実施に協力してくれている全国の企業に,実施の説明や実施後のフォローアップの目的で出張を予定しており,その分の旅費・宿泊費等について予算を計上していたが,やはり新型コロナウイルスの影響により,出張による説明が困難な事態となり,計上していた調査協力企業への出張予算も次年度繰越となった。また,新規調査研究の実施スケジュールが新型コロナウイルス流行の関係で遅れたため,並行して実施をする予定であった系統的レビューの計画も遅れることとなり,予定していた有料のデータベースの使用料金や各種ソフトウェアの購入を目的として計上していた予算も,次年度に繰越することとなった。以上により次年度使用額が生じることとなった。
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