研究課題/領域番号 |
18K10068
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
加茂 憲一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10404740)
|
研究分担者 |
福井 敬祐 大阪医科大学, 研究支援センター, 助教 (50760922)
伊藤 ゆり 大阪医科大学, 研究支援センター, 准教授 (60585305)
伊森 晋平 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (80747345)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | がん登録 / がん罹患 / 数理モデル / 区間推定 |
研究実績の概要 |
都道府県規模で収集されている「がん罹患数」については、登録漏れや報告遅れに起因するバイアスが混入しており、報告値が必ずしも確定値となるとは限らない。しかし、罹患報告には、直近の情報が貴重であること、全国がん登録集計において必要なことから、即時性も要求されている。このような背景から、報告値がどの程度の信頼性を有しているのかを、数理モデルによるアプローチにより定量的に表現する手法に着目するのが本研究である。 罹患報告プロセスに着目すると、罹患数は過小評価されていることが多い。このことは死亡票により把握されるDCNの割合が一定数存在することからも分かる。そこで、数理的なアプローチとして、罹患数を点推定するのでなく、信頼区間(ベイズ法を基盤にするので正確には信用区間)で推し測ることを試みた。 統計的手法としては、登録の完全性を回帰式により補正するメカニズムを組み込んだ階層ベイズモデルを構築し、その手法を全国がん登録において収集される都道府県データに適用した。本解析において用いるのは罹患数のみならず死亡数とDCN数である。信用区間を95%と設定したところ、大半の都道府県が区間内の推定値に至っていないという結論を得た。基本的にはDCN割合が低い都道府県に関して、点推定値と実測値の乖離が少ない傾向にあった。 本モデルでは、登録の完全性補正のために線形モデルを用いているが、非線形モデルの適用可能性も指摘されている点が今後の課題である。また登録漏れや登録遅れが発生するメカニズムについて、研究代表者の居住している北海道のデータを利用する可能性について議論を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数理モデリングや計算プログラムの実装作業を分担する際には対面での作業が効果的であるが、コロナ禍の影響によりその機会がゼロであった。また北海道データを用いる準備調整についても現地(北海道がんセンター)を訪問することができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
数理面に関して、登録の完全性を補正するモデルを線形で構築しているが、死亡率の変化に対応するパラメータを導入するためには非線形モデルを考察する必要性がある。この点に関しては、線形モデルと非線形モデルを比較検証するための手法についても課題である。こられの点に関しては対面作業が困難な場合はオンラインを有効活用することにより研究を推進してゆきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
数理モデル構築およびプログラム実装作業を対面で行う予定であったが、コロナ禍の影響で一度も実現できず、進捗に遅れが生じた。繰り越した研究費については、研究補助のための人件費、オンライン会議に関連する経費として使用する予定である。
|