研究課題/領域番号 |
18K10068
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
加茂 憲一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10404740)
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研究分担者 |
福井 敬祐 大阪医科薬科大学, 研究支援センター, 助教 (50760922)
伊藤 ゆり 大阪医科薬科大学, 研究支援センター, 准教授 (60585305)
伊森 晋平 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (80747345)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん登録 / がん罹患 / 数理モデル / 遅れ補正 |
研究実績の概要 |
都道府県規模で収集され報告されている「がん罹患数」については、報告値に登録漏れや報告遅れが混入しており、報告値が必ずしも正確な確定値となる訳ではない。この点に関して、特に時間的に遅れて報告されるケースに着目し、遅れ報告を数理モデルを用いて再現することによる遅れ補正モデルの構築を試みた。遅れ報告には、暫定罹患数を減らす方向と増やす方向の二種類が存在するが、日本においては後者が多数を占めるため、基本的に遅れ補正は積み上げ方式であると仮定した。更にいずれ遅れ補正は無くなるという前提で、漸近的な上限が存在するものと仮定した。この2つの条件を充足するために、遅れ報告に関する年ごとの差分に着目し、それが等比数列に従うものと仮定してモデルを構築した。等比数列に含まれる公費パラメータは、差分に対する最小二乗法により推定した。 愛知県の2003年罹患データが、その後12年分の遅れ報告を有しているため、このデータのうち男性全がんに対して等比数列モデルを適用した。その結果、公比パラメータ0.76762が推定された。この結果を用いて罹患の遅れ補正を行うと15976人の罹患数が推定された。MCIJ2003として報告された罹患数は15589人であったため、この推定結果は387人が追加で遅れ報告される可能性を示唆している。初期報告から12年後における2003年罹患が15966人であることから、12年経てば遅れ報告の約97%が充足されていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数理モデリングにおけるシミュレーションプログラムの実装作業においては、研究分担者を含めた対面での作業が効率的であるが、コロナ禍の影響によりゼロであった。遅れ補正モデルにおける説明変数の調整のために北海道データを用いる調整に関しても北海道がんセンターを訪問する機会がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
がん罹患の遅れ補正に関して、等比数列を用いた積み上げ式モデルの基礎部分が完成している。今後は実地面である、データの不均一性に対応する推定方法や、遅れ報告に影響を与える要因に関する分析を行い、モデルの洗練を進める予定である。 実解析に関しては、現在完了している愛知県の2003年男性罹患に留まらず解析範囲を拡げることにより、現行モデルの有する問題点を洗い出す。 コロナ禍により対面のプログラム実装作業が困難な場合にはオンラインを有効活用することにより研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
数理モデルの構築およびシミュレーションの実装に関して、対面での協働作業を予定していたが昨年度はコロナ禍の影響で実現できなかった。この作業を次年度に作業を繰り越したために、次年度使用額が発生した。
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