研究実績の概要 |
日常生活において認知機能をよく賦活する高齢者は認知機能が低下しにくいことが欧米を中心として報告されている(「認知の予備力仮説」)。この「認知の予備力」の候補としては、教育歴、職歴、余暇活動、社会活動性等が報告されている。本研究では、多面的に「認知の予備力」を測定する尺度を開発するために、基礎的な知見を得ることを目的とした。 活動(1)手持ちのデータを分析することにより、知見の公表を行った。①Iwasa, Yoshida(Personality and health literacy among community-dwelling older adults living in Japan, Psychogeriatrics 2020; 20: 824-832)では、地域高齢者における性格(とくに開放性)とヘルスリテラシーの関連を見出した。②Yoshida, Iwasa他(2021, Leisure activity moderates a relationship between living alone and mental health among Japanese older adults, Geriatrics and Gerontology International 2021; 21: 421-425)では、余暇活動が独居と精神的健康の関連を調整することを見出した。③Iwasa, Yoshida他(Factors associated with cognitive failure among mothers involved in child care. Cogent Psychology 2021; 8: 1896119.)では、子育て中の母親における性格(とくに勤勉性)と認知的失敗の関連を見出した。 活動(2)都市部在住の中高年者(40~79歳男女、1200人)に対して郵送調査を実施し、403人(33.6%)が参加した。主として、仕事の複雑性、余暇活動、性格(開放性、勤勉性)、生活機能と認知的失敗ならびにメタ記憶能力との関連を検討し、「認知の予備力」測定尺度の開発に資する知見を得た。今後は、国内外の学会ならびに英文論文において知見を順次公表する予定である。
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