研究課題/領域番号 |
18K10071
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
竹村 重輝 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70511559)
|
研究分担者 |
津野 香奈美 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 講師 (30713309) [辞退]
吉益 光一 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (40382337)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 手腕振動障害 / 作業管理 / 日振動ばく露量A(8) / 特殊健康診断 / 産業保健 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、過年度に引き続き、主に林業に従事する者と現業公務員を対象とした、既存の振動障害特殊健康診断データを整備した。 整備したデータをもとに、主に林業に従事する者の振動障害特殊健康診断を通じた保健指導について学会発表をおこなった。受診者は日本全国に比べて、肥満の有病率が高かったが(30.5% vs. 28.6%、標準化有病率比1.02)、高血圧の有病率は低かった(39.9% vs. 57.4%、標準化有病率比0.97)。労働による運動量の多さが高血圧の有病率低減に寄与していると考えられた。受診者は総体として肉体労働者であり、運動量が多いことを考慮し、減量・食事療法・薬物療法を中心に指導した。一方、現在喫煙率が高い状況にある(38.1% vs. 30.2%、標準化喫煙率比1.02)。個人レベルでの禁煙勧奨と併せて、各事業場での喫煙対策も提言した。今後の振動障害を含む保健指導向上には、労働衛生管理体制を考慮する必要がある。 日本における手腕振動障害対策に関する総説発表に、宮下和久理事長・学長(和歌山県立医科大学)の指導下で参加した。最近の振動障害の労働災害新規認定件数は年間300件前後で推移しているが、いわゆる下げ止まりの傾向にある。振動障害の進行した症状は回復困難であるため、労働衛生管理を通じた予防(低振動の振動工具の選定、振動ばく露時間の抑制、個人用保護具の着用、振動工具取扱作業者を対象とした特殊健康診断等の対策)が重要であることを示した。工具振動値と使用時間を考慮した日振動ばく露量A(8)に基づく評価を実効的なものにすることが今後の課題である。 現在、振動工具取扱作業を行う事業場を対象とした、労働衛生管理に関する質問票作成を進めているが、調査実施にいたっていない。新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、質問紙調査と、振動工具の振動値の実地測定に遅れが生じている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
振動工具取扱作業を行う事業場を対象とした、労働衛生管理に関する質問票作成を進めているが、調査実施にいたっていない。新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、質問紙調査と、振動工具の振動値の実地測定に遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
和歌山県下の振動工具を取り扱う事業場(林業従事者・現業公務員等)を対象に、郵送式質問票による調査を行う。事業場の従業員数、その中で振動工具を取り扱う者の数、使用振動工具と使用時間、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者・衛生推進者の選任状況、振動工具管理責任者の選任状況、振動工具の更新頻度、日振動ばく露量A(8)を用いたばく露評価の有無等、作業管理体制について質問する。また、和歌山県下の振動工具取扱労働者(林業・公務員等)を対象に、特殊健康診断を毎年秋季~冬季に実施している。上述の作業管理体制と、特殊健診における有所見率(末梢循環障害・末梢神経障害・運動器障害の頻度、健康管理区分)の関連を評価する。 協力の得られる和歌山県下事業場の作業現場(民間林業、県道、農林試験場等の作業場) で、振動工具ハンドル部の振動値を測定する。その結果から、作業者におけるA(8)を算出し、A(8)の値と評価区分([あ]2.5 m/s2以下、[い]2.5m/s2を超え5.0 m/s2以下、[う]5.0 m/s2を超える)および特殊健診における有所見率の関連を評価する。 得られた結果は、報告書や対策説明会等を通じて各事業場に報告する。その結果として、各事業場の作業管理体制に生じた変化(安全衛生人員の選任、A(8)の導入等)を、再度、郵送式質問票で調査する。必要に応じて、事業場へのモニタリングを行う。また、作業管理の変化が特殊健診における有所見率にどのように影響したかを評価する。 なお、新型コロナウイルス感染症流行は終息にいたっていない。流行状況の変化を含めた諸般の事情に応じて、活動内容を変更する可能性がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、当初、令和元年9月に欧州で開催される国際標準化機構(ISO)の国際会議である、ISO/TC 108/SC 4(国際標準化機構・第108技術委員会・第4分科委員会)に出席し、機械振動と衝撃の人体への影響に関する国際規格について情報を取得することを予定していた。しかし、国内委員会の方針により会議出席が中止になった。そのため、次年度使用額が生じた。 現時点では、新型コロナウイルス感染症流行のため海外渡航が困難な状況にある。そこで、国内委員会等を通じた情報取得に次年度使用額を充当する予定である。海外渡航が可能になり、国際会議出席が可能な状況が生じた場合には、これに次年度使用額を充当する予定である。
|