研究課題/領域番号 |
18K10071
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
竹村 重輝 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70511559)
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研究分担者 |
津野 香奈美 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 准教授 (30713309) [辞退]
吉益 光一 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (40382337)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 手腕振動障害 / 作業管理 / 日振動ばく露量A(8) / 特殊健康診断 / 産業保健 |
研究実績の概要 |
従来、和歌山県下の事業場で振動工具を取り扱う労働者(林業従事者・現業公務員等)を対象とした振動障害特殊健康診断を行ってきたが、次のような問題が生じていた。(1)問診票の書式が林業群と公務員群で異なり、健診会場での記入とコンピューターへのデータ入力に混乱が生じること、(2)健診データ管理システムが林業群と公務員群で異なり、両群のデータ統合がしにくいこと、(3)データの集計・出力に表計算ソフトExcelと文書作成ソフトWordを用いた、煩雑な手作業を必要としていること。そこで、データベースソフトAccessを用いた新しい健診データ管理システムを導入し、両群とも同じシステム下でデータを集計・出力できるようにした。これにより、データ集計・出力の効率が向上した。今後の課題として、両群の問診票書式統合を通じたデータ統合の効率化がある。 振動障害特殊健康診断では、令和2年度に実施した受診者数の制限は行わなかったが、引き続き感染症対策を行った。冷水浸漬試験を含む二次健診については、従来、振動障害の厳密な評価と管理を行う観点から、受診者ほぼ全員を対象に実施していた。令和3年度からは、健診体制の見直しにより、過年度の検査成績を踏まえて、振動障害リスクのより高い者と希望者に限定して実施することになった。林業群では受診者323人中12人、公務員群では受診者70人中14人に二次健診を実施した。これにより、今後の二次健診データは主に高リスク群からに限られる見込みである。 上記の新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて、振動工具取扱作業を行う事業場を対象とした、労働衛生管理に関する質問票作成と、振動工具の振動値の実地測定にも遅れが生じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて、振動工具取扱作業を行う事業場を対象とした、労働衛生管理に関する質問票作成と、振動工具の振動値の実地測定に遅れが生じている。そのため、さらに1年間の研究期間延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、振動障害健診現場の協力を得て健診データ収集を引き続き推進する。 和歌山県下の振動工具を取り扱う事業場(林業従事者・現業公務員等)を対象に、郵送式質問票による調査を行う。事業場の従業員数、その中で振動工具を取り扱う者の数、使用振動工具と使用時間、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者・衛生推進者の選任状況、振動工具管理責任者の選任状況、振動工具の更新頻度、日振動ばく露量A(8)を用いたばく露評価の有無等、作業管理体制について質問する。また、和歌山県下の振動工具取扱労働者(林業・公務員等)を対象に、特殊健康診断を毎年秋季~冬季に実施している。上述の作業管理体制と、特殊健診における有所見率(末梢循環障害・末梢神経障害・運動器障害の頻度、健康管理区分)の関連を評価する。 協力の得られる和歌山県下事業場の作業現場(民間林業、県道、農林試験場等の作業場)で、振動工具ハンドル部の振動値を測定する。その結果から、作業者におけるA(8)を算出し、A(8)の値と評価区分([あ]2.5 m/s2以下、[い]2.5m/s2を超え5.0 m/s2以下[う]5.0 m/s2を超える)および特殊健診における有所見率の関連を評価する。 得られた結果は、報告書や対策説明会等を通じて各事業場に報告する。その結果として、各事業場の作業管理体制に生じた変化(安全衛生人員の選任、A(8)の導入等)を、再度、郵送式質問票で調査する。必要に応じて、事業場へのモニタリングを行う。また、作業管理の変化が特殊健診における有所見率にどのように影響したかを評価する。 なお、新型コロナウイルス感染症流行は依然として続いている。流行状況の変化を含めた諸般の事情に応じて、活動内容を変更する可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、令和3年9月に欧州で開催された国際標準化機構(ISO)の国際会議である、ISO/TC 108/SC 4(国際標準化機構・第108技術委員会・第4分科委員会)に出席し、機械振動と衝撃の人体への影響に関する国際規格について情報を取得した。当会議は従来、対面式の会議であったが、新型コロナウイルス感染症流行のため、今回はインターネット会議として実施された。そのため、海外渡航旅費を支払う必要がなくなり、次年度使用額が生じた。 現時点では、新型コロナウイルス感染症流行が続いており、今後もインターネット会議の実施が予想される。そのため、次年度使用額は、上述の国際会議と、国内委員会等を通じた情報取得に係る経費として用いる予定である。
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