研究課題/領域番号 |
18K10072
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研究機関 | 北海道千歳リハビリテーション大学 |
研究代表者 |
森 満 北海道千歳リハビリテーション大学, 健康科学部, 教授 (50175634)
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研究分担者 |
北澤 一利 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (00204884)
尚和 里子 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30813919)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 後期高齢者 / 多重タスク運動 / 健康増進 / 日常生活動作 / 閉じこもり / 抑うつ状態 |
研究実績の概要 |
北海道では、冬期間には他の季節と比べて運動量が減少する。北海道の冬期間は気温が低く、降雪があるため、屋外で運動する機会が少なくなる。特に後期高齢者ではその傾向が強い。われわれは、後期高齢者においても、冬期間においても、実施することができる「ふまねっと運動」(以下、F運動)を2004年に開発し、普及を図ってきた。2017年現在、その普及の中心となるF運動のサポーター数は7,000人以上となっている。F運動は複数の課題を同時にこなす身体的活動で、多重タスク運動の一種である。F運動の実施者が比較的多い北海道内8町において、町役場の協力のもとに、75歳以上80歳未満の者を対象とした3年間の前向き縦断研究を開始した。F運動実施者群とF運動非実施者群について、健康指標を含む種々の要因を年1回、3年間繰り返し測定し、反復測定データの分散分析法で比較して、F運動を実施することが後期高齢者の健康維持増進につながり、しいては、介護予防に寄与する、ということを明らかにすることを目的とする。F運動の実施者が比較的多い北海道内の8町(比布町、様似町、由仁町、浜中町、士幌町、池田町、弟子屈町、上富良野町)を調査対象地域に選定した。2018年10月1日現在で、75歳から79歳までの8町の町民3,156人のうち、調査に同意した2,227人に、2018年10月から12月までの間に、自記式調査票による生活習慣と健康状態の調査研究を実施し、回答を得た(回答率70.6%)。北海道千歳リハビリテーション大学倫理員会で承認された(千リ倫18006)。研究対象者には説明した上での同意を書面で得た。書面で同意が得られなかった研究対象者には調査を行わなかった。研究への参加、不参加は自由であり、参加しないことにより、不利益な取り扱いを受けることはないことを説明した。調査に同意した後でも、同意を撤回できることを説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
F運動に参加した経験がある者の割合は2,178人中747人(参加経験率34.3%)であった。また、過去1年間にF運動に参加していた者の割合は2,172人中557人(過去1年間の参加率25.6%)であった。次に、基本チェックリストの各項目の関連性について、ロジスティック回帰分析によって性と年齢を調整したオッズ比(AOR)とその95%信頼区間(95%CI)を求めた。その結果、過去1年間にF運動に参加していたことは、日常生活関連動作が低下するAOR(95%CI)が0.42(0.34-0.52)と有意に低かった、運動器の機能が低下するAOR(95%CI)が0.74(0.59-0.91)と有意に低かった、低栄養状態が悪化するAOR(95%CI)が0.83(0.65-1.05)と有意ではなく、口腔機能が低下するAOR(95%CI)が0.87(0.71-1.06)と有意ではなく、閉じこもりが悪化するAOR(95%CI)が0.43(0.33-0.56)と有意に低く、認知機能が低下するAOR(95%CI)が0.63(0.50-0.78)と有意に低く、抑うつ状態が悪化するAOR(95%CI)が0.62(0.50-0.76)と有意に低く、日常生活活動全般が低下するAOR(95%CI)が0.55(0.41-0.75)と有意に低かった。
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今後の研究の推進方策 |
断面研究の結果ではあるが、F運動に参加していることが後期高齢者の健康によい影響を及ぼしている可能性が示された。2019年と2020年に行う第2回目調査、第3回目調査の項目は、以上のほかに、入院、入所、死亡、転出という調査項目が追加される。F運動実施者群とF運動非実施者群について、上記の要因を年1回、3年間繰り返し測定し、反復測定データの分散分析法(Repeated Measures ANOVA)で比較して、F運動を実施することが後期高齢者の健康維持増進につながり、しいては介護予防に寄与することを明らかにする。
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