研究課題/領域番号 |
18K10089
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小林 法一 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (30333652)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | BPSD / 認知症 / 作業療法 / ケア / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
認知症に伴うBPSDは,本人および家族のQOLのみならず,介護者や医療者等の支援に重大な支障を与えかねない.一方で,BPSDは適切な支援によって軽減可能とされている.代表的なのが本人にとって大切で意味のある役割や活動への参加支援である.活動中の彼らは,実に穏やかで落ち着いた様子を見せる.しかし,そうした活動は個人によって異なるため,その特定が最大の課題となっている. この解決に向けて,2つのコミュニケーションtoolを考案,試行し評価マニュアルの開発を進めている.これらのtoolは,①認知症者とのコミュニケーションを容易にして豊富な語りを引き出すこと,また②toolにより引き出された語りの中に,本人の望む役割活動の特定に役立つ情報が含まれていることが示唆されている.本研究の目的は,これらの成果を土台にBPSDの低減効果を実証し,介護現場等を想定した実施マニュアルを整備することである. 今年度は専門家委員会による実施マニュアルの再検討に向けて,2つの研究を進めた.1点目は前年度より継続しているコミュニケーションと交流の分析である.Toolが有効に機能すると認知症の方々の間で自然な会話が成立し,和やかな交流が展開される.このような会話や交流がどのように立ち起こるのか,その機序を分析した結果,3つ程度のパターンがあることを明らかにした.2点目は支援者側の評価の視点の解明である.言語によるコミュニケーションに難がある重度認知症者の支援では,支援者側が対象者の表情や仕草から意思を読み取ることになる.この際,支援者側がどのような情報(表情などの非言語的サイン)を手掛かりとするのかを詳細に調べた.その結果,支援者は対象者の発する9つ程のサインの複合的な組合せを手掛かりに,意思を判断することがわかった. 以上の成果は開発を目指す支援マニュアルに反映される予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も新型コロナウイルス感染症の影響により協力施設での介入研究を自粛せざるを得ない状況であった.そこで撮りためたtool利用時の動画の分析を進めた.また,追加の研究を企画し,これを実施した.これらについては順調に進み,これまでの遅れを幾分挽回した.全体としては介入研究の実施困難が大きく影響し,当初計画から遅れが出ている.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に入り,臨床現場での介入研究が一部の協力施設で再開できる見込みである.しかし当初予定のサンプルサイズは見込めないことから,介入研究は規模を縮小する.代わりに観察研究を進め,AI画像解析等の新たな分析を加えることで,目標の達成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍,病院施設での介入研究を全面的に自粛したため,これに掛かる旅費・人件費の支出がなかった. 今後,介入研究を部分的に再開するとともに,観察研究を実施する.また追加研究として,備品の購入が発生するため,最終的には予定金額を使用する見込みである.
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