研究実績の概要 |
健康寿命の延伸には青壮年期からの行動変容が求められる。本研究はヘルスリテラシー(HL)の規定要因、HLと健康指標と保健行動の関連を明らかにすることを目的に一製造工場の労働者を対象に調査研究を行った。 2019年度はHL(HLS-EU-47日本語版)、職場と地域SC、学歴、婚姻、労働環境、保健行動などに関する自記式アンケート調査を行い、6,963人から回答を得た(回収率84.8%)。また、2018から2020年度の生活習慣、健診結果を入手し、アンケート調査データと突合した。65歳未満で分析に用いた項目に欠損がなかったもの5829人(男3,998人、女1,831人)について以下の分析を行った。 HLの関連要因については、男女とも職種、職場SC、地域SC、健康状態が有意に関連していた。生活習慣とHLの関連では、男女とも運動、緑黄色野菜の摂取、朝食摂取、歯磨きと有意に関連していたが、喫煙との関連がなかった。職種・勤務形態、婚姻状態、学歴、労働時間を調整しても結果は同じであった。HLの調査の前後(2019年と2020年)での生活習慣の変化によって4群(良い習慣を維持群、良い習慣から良くない習慣に変化群、良くない習慣から良い習慣に変化群、良くない習慣を維持群)に分けてHLスコアを比較したところ、男女とも運動習慣なしを維持していた群はその他よりもHLは有意に低かった。噛みにくい状態を維持していたものもHLが他に比べて低かった。就寝前の飲食無を継続群はHLが高かった。喫煙については4群間で差がなかった。 以上より、喫煙については政策や地域環境の転換が個人のヘルスリテラシーよりも影響していることが示唆された。一方、食生活、特に緑黄色野菜を摂取することや、余暇の運動は日々取り組む必要がある習慣であり、より高いヘルスリテラシーが必要になると考えられた。また生活習慣には職種間で格差が認められた。
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