研究実績の概要 |
炭水化物は、単純糖質(単糖類や二糖類)、複合糖質(でんぷんなど)の別によってその栄養学的意味は異なるが、単純糖質や複合糖質の過剰摂取は糖尿病などのリスク上昇につながると考えられている。本研究課題では、単純糖質摂取量および甘味嗜好の遺伝要因を検討し、遺伝情報を活用して、単純糖質摂取量・甘味嗜好と疾病との関連を検討することを目的としている。 2020年度までの検討で、単純糖質摂取量・甘味嗜好の遺伝要因を見出すことができなかったため、2021年度には、遺伝上情報を用いずに、単純糖質やでんぷんの摂取が2型糖尿病リスクと関連するか否かに関するコホート研究を実施した。多目的コホート研究(JPHC研究)の参加者45~75歳の内、糖尿病や循環器疾患、がんの既往などのない64,677人(男性27,797、女性36,880人)を対象にして、5年間追跡した調査結果にもとづいて、糖質の摂取量と2型糖尿病罹患との関連を調べた。その結果、5年間の追跡期間で、1190人(男性690人、女性500人)が糖尿病に罹患し、女性では、でん粉の摂取量が多いと糖尿病の罹患リスク増加と関連し、単純糖質の摂取量が極端に多い(一日あたり30%エネルギー以上)と糖尿病の罹患リスク上昇と関連していた(Kanehara R et al. EJCN 2022 May;76(5):746-755.)。 ゲノム解析については、我が国のデータで、単純糖質摂取量および甘味嗜好の遺伝要因は明らかにできなかったため、英国のUK biobankのデータ利用申請を行い、約50万人のUK biobankの食事摂取頻度や遺伝子多型の情報を用いて、検討する環境を整えた。
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