研究課題/領域番号 |
18K10101
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
関 奈緒 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30270937)
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研究分担者 |
小林 恵子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50300091) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 非医薬的公衆衛生対策 / 学童 |
研究実績の概要 |
2021年度も引き続き、フィールドである佐渡市の医療機関と連携してインフルエンザ発症登録システムを運用した。本システムは佐渡市の内科、小児科標榜医療機関の8割以上が連携しており、地域のインフルエンザ発生をほぼ把握できるものである。しかし、COVID-19の流行に伴い全国的にインフルエンザの発生が抑制されたのと同様に、佐渡市も2020/2021及び2021/2022シーズンともに発症登録は0であった。さらに本研究で効果検証の対象としていた手洗い,手指消毒,マスク着用などの非医薬的公衆衛生対策は、COVID-19対策として2021年度も高い実施率が続いており、予防行動プログラムによる介入研究の実施と評価という申請時の研究計画を遂行することができなかった。そのため2021年度は2019年度に全小学生を対象に実施した2019/2020シーズン開始前の予防行動実施状況調査(ベースライン調査)及び2020年度に実施したシーズン終了後調査(フォローアップ調査)の分析をさらに進めた。両調査の対象者をリンクし、ワクチン接種の有無を補正項として個々の予防行動のオッズ比を算出したところ、ベースラインにおけるマスク着用がオッズ比1.69(P=0.004)と有意に発症リスクを高めるという結果を得た。また2020年度に検討課題としていたCOVID-19の流行に伴う予防行動実施状況のシーズン前後の変化に関しては、やはり手指消毒とマスク着用はインフルエンザ発症あり群、なし群の両群ともにベースライン調査に比べフォローアップ調査で有意に実施率が高くなっていたが、それ以外の予防行動については有意な実施率の上昇が認められたのは発症なし群のみであった。2019/2020シーズンの予防行動の解析結果にこれらの行動変化が影響を及ぼした可能性は否定できず、今後のシーズンにおける研究の蓄積が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では2020年度~2021年度に2019/2020シーズンに実施した小規模介入研究(パイロットスタディ)及び前向き観察研究の結果に基づいて有効な非医薬的公衆衛生対策としての予防行動を決定し,介入ツールや介入プログラムの策定及び介入研究を行う予定であった。しかしCOVID-19のパンデミックに伴い,パイロットスタディは2019/2020シーズン途中での中断を余儀なくされ、さらに2020/2021シーズン、2021/2022シーズンともに研究フィールドとしている佐渡市においてインフルエンザの発症登録が0という状況が続いている。そのため研究の遂行に大きな影響が生じ、大幅な遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は非医薬的公衆衛生対策である手洗い,手指消毒,マスク着用などのインフルエンザ発症予防効果を介入研究により明らかにすることを目的としているが、2020年以降、これらの予防行動がCOVID-19対策として広く普及し、介入研究の実施が困難になっている。さらに、2020/2021シーズンに引き続き、2021/2022シーズンも佐渡市内でインフルエンザの発生がなく、次シーズン以降のインフルエンザ発生について予測することがより難しくなった。このように本研究は研究計画を変更せざるを得ない課題が蓄積している状況である。2021年度に実施した分析の結果より、COVID-19の流行がシーズン中に発生した2019/2020シーズンにおいて、シーズン開始前とシーズン終了後における予防行動実施状況の変化が明らかとなったことから、今後はまず予防行動について経時的な変化を把握するための追跡調査についてフィールドと協議し、調査の制度設計及び実施体制について検討していく。また引き続きインフルエンザ発症登録を運用するとともに、補助事業期間の延長を申請し、当初計画である予防効果の検証に向けた介入研究の準備を整える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による一斉休校で小学校におけるパイロットスタディを中断したことにより2019年度に介入用物品費等の一部未執行が生じたこと、また2020年度、2021年度ともに佐渡市内のインフルエンザ発症登録が0であったことによる登録票郵送費及び入力補助者謝金等の未執行、さらに学会がWeb開催となり旅費が発生しなかったことなど、やむを得ない事情による執行残額の蓄積によって次年度使用額が生じた。2022年度は補助事業期間の延長申請も考慮しつつ研究計画を見直すとともに、関係機関と調整を行って執行計画も含めて早期に検討する。
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