市区町村別の死因別死亡状況の分析には、一般に標準化死亡比(Standardized Mortality Ratio: SMR)が用いられ、これを基にした塗り分け地図(SMR分布地図)を作成することにより特定の死因の地域的な偏在の確認が行われたり、他の市区町村特性の変数との関連を分析する生態学的研究が行われたりしてきたが、SMRの長期的な推移をみたものはない。そこで本研究では、主要な死因についてSMRの長期的な推移に関する特性を明らかにすることを目指し、長期にわたる市区町村別SMRデータベースの構築およびSMR分布地図の作成を行った。 4年目までに、全死亡および比較的死亡数が多く死因分類に大きな変更のなかった41死因について、1983年から2017年までの35年間を5年間ごとの7期間に分け、性別に市区町村別SMRの算出を行った。SMRは通常のSMRに加えて、統計学的有意差検定を行うとともに、モーメント法によるSMRのベイズ推定量も算出した。最終年度はこれらのデータを用いて5段階の塗分け地図を性別、死因、期間ごとに2×42×7=588枚作製した。また、前年度に実施した有意差検定の部分については区間推定に見直した。 算出したSMRおよび塗分け地図は膨大なデータであるため、今後、機関リポジトリにより公開していく予定であり、様々な研究での活用が期待される。 なお、これらのデータおよび地図により、SMRの長期的推移についての分析を行う予定であったが、新型コロナ感染症のため、大学として研究活動抑制の方針が示されたことに加えて、1980年代の市区町村・性・年齢別人口や市区町村境界の地図データの入手に時間を要し、十分な分析ができなかった。
|