研究課題/領域番号 |
18K10110
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
湯浅 資之 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (30463748)
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研究分担者 |
横川 博英 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00328428)
白山 芳久 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (30451769)
田村 好史 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (80420834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | type2 diabetes mellitus / physical activity / METs / eating habit / Myanmar |
研究実績の概要 |
我々は2014年のミャンマーにおける2型糖尿病有病率が10.5%、耐糖能異常が19.7%であり、県別ではヤンゴンの糖尿病罹患率が18.2%と最も高く、近隣のアジア諸国と比較して同国の糖尿病罹患が高率であることを明らかにした。そこで、クーデター勃発以前の2019年に、糖尿病リスクとなる身体運動と食習慣の影響を解明するため症例対照研究を実施した。 ヤンゴン市内の3病院で過去半年間に新たに糖尿病と診断された症例群150名と、同市内4か所のコミュニティから無作為に選定した非糖尿病の対照群150名を比較した。身体運動は国際身体活動調査票(IPAQ-SF)、食習慣は食品頻度調査票(FFQ)の英語版からミャンマー語に翻訳した後、事前調査を実施して妥当性と信頼性を確認した質問票を用いてデータを収集した。 症例群は男31%、平均年齢55.1歳、対照群は男44.7%、平均年齢43.3歳であった。症例群と対照群の活発な身体運動(平均±標準偏差)はそれぞれ73.1±392.1METs、254.9±845.6METs、中程度の身体運動は1050.9±1601.6METs、631.5±1240.8METs、歩行程度の軽い身体運動は777.4±1249.0METs、569.8±1060.0METsであった。糖尿病リスクに関するロジスティック回帰分析では40歳以上で中等度の身体運動のオッズ比ORは3.84(p<0.05)、40歳以上で軽度の身体運動のORは18.01(p,0.001)であった。 食習慣では、対照群に比べ症例群は調味料使用のORが16.4(p<0.001)、野菜摂取のORが0.471(p=0.051)、家族と食事を共にするORが2.258(p=0.044)であった。さらに調味料摂取量が高い症例群では炭水化物摂取が高いORが3.333(p<0.001)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の結果から、ミャンマーのヤンゴンにおいて、中程度の身体運動をしている場合には40歳以上であっても糖尿病リスクは40歳未満で身体運動が低い場合のリスクよりも低いことが明らかとなった。また、塩、醤油、魚醤などの調味料使用は糖尿病リスクと有意な関連を認め、逆に野菜の1日当たり2回以上の摂取は糖尿病リスクの低下と関連を認めた。なお他の先行研究とは異なり、家族との会食が糖尿病リスクを高める可能性が示唆された。 こうした結果は、熱帯地方に位置するヤンゴンでも身体運動が糖尿病リスクを低下させ、調味料を多量に使用するミャンマーの伝統的食事を改善することも糖尿病リスクを低下させる可能性が示唆された。共同研究者の一人は同国糖尿病協会の理事長を務めていることから、結果を同協会ホームページに掲載すると同時に、日中の暑さを回避して室内でも簡易にできる身体運動のDVDを公開した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は2014年6月からミャンマー研究者と糖尿病に関する疫学研究を継続してきた。同国の糖尿病罹患率を始めて明らかにするとともに、マルコフモデルを使って同国の糖尿病負荷の将来予測を行ってきた。しかし、2021年2月から同国は国軍クーデターによる非常事態下にあり、共同研究者との連絡も中断状況にあることから、当面は研究を継続することが困難な状況にある。今後は隣国タイに移住しているミャンマー人を対象に研究を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の国際的流行により、ミャンマーへの渡航が制限され、現地の調査が実施できなかった。
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