研究課題/領域番号 |
18K10110
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
湯浅 資之 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (30463748)
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研究分担者 |
横川 博英 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00328428)
白山 芳久 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (30451769)
田村 好史 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (80420834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タイ / 2型糖尿病 / 運動習慣 / 疾病管理 / ミャンマー |
研究実績の概要 |
これまで、本研究はミャンマーおよびタイにおける2型糖尿病患者と非糖尿病対象者の運動習慣と食事習慣の比較研究を行ってきた。 今回は、主にタイ北部チェンマイにあるサンパトン病院に通院する25~74歳の150名の2型糖尿病患者(ケース群)と、150名の非2型糖尿病患者(コントロール群)を対象に運動習慣の比較分析を行った。運動強度は国際標準化身体活動質問票(IPAQ)を用い、症例対照研究デザインにより分析を行った。解析はχ2検定、Fisher正確確率検定、Mann Whitney検定、重回帰分析を用いた。解析の結果、運動の重要性はケース群で有意に教育されており(P<0.01)、多くの2型糖尿病患者(93.3%)がヘルスプロモーション教育を医療機関で受けていることが判明した。一週間あたりの代謝当量の中央値は、ケース群が高値(2,726対1,140 MET/min/wk)であった。年齢や性別を調整してもケース群のほうが有意に運動強度が高いことが判明した(P<0.01)。チェンマイの糖尿病患者において、非糖尿病患者と比較してより高い運動強度が認められたことから、プライマリヘルスケアレベルで 糖尿病の健康教育を適切に実施することで、生活習慣を変化させることが出来ることが示唆された。 ミャンマーにおいての我々の同様の調査では、糖尿病患者の方が運動習慣は低かったのに対して、タイではその逆に糖尿病患者の方が運動習慣が高い結果となった。すなわち、タイでは健康教育が糖尿病患者にしっかり行き渡っていると考えられた。このことから、同じ文化圏のミャンマーでも、コミュニティにおけるヘルスプロモーションがタイのように行き渡ることで、ミャンマーの糖尿病発症リスクを減らしうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動習慣におけるタイとミャンマーの比較分析が終了し、ミャンマー国における糖尿病対策の有益な方針が示唆された。ミャンマーとタイは同じ仏教文化圏に属していながら、糖尿病患者の運動習慣が対照群に比べて全く逆の結果となったことは、両国の保健システムの機能格差の結果であると推察される。この結果をもとに、ミャンマー国の生活習慣病患者に対する健康教育の強化が必要であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はタイ国の食習慣の分析を行うことで、ミャンマーとの比較検討が可能となる。タイに比べてミャンマー料理は食用油を多用する。この食材の相違が、両国の食習慣にどのような影響を与えるのか、興味ある結果が得られると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ流行で研究地への渡航が困難であったことと、ミャンマー国内の紛争の影響から、現地の共同研究者とのコンタクトが著しく困難となり、解析、論文化に想定外の遅延が発生してしまった。
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