研究課題/領域番号 |
18K10112
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
小島原 典子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (50226867)
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研究分担者 |
山口 さち子 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 産業毒性・生体影響研究グループ, 上席研究員 (30548954)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療被曝 / CTスキャン / MRI / 脳腫瘍 |
研究実績の概要 |
MRI検査では高周波電磁界ばく露が用いられるため、携帯電話と同様に発がんにおけるリスクを検討する必要がある。MRI検査におけるSARを決定する要因は①装置要因、②撮像要因、③被験者要因がある。Mobi-Kids StudyのインタビューからMRI検査の有無、検査部位、回数、年齢、MRI装置台数の年次統計情報からMRI検査による高周波電磁界ばく露を推計し、小児脳腫瘍における影響を検討した。 ばく露推定については、小児の頭部MRI検査に関するSAR推定に関する報告やDICOM情報を利用した手法によりSAR推定値を検討する。本年は質的情報の整理、ばく露推定について文献調査を実施した。 質的情報の整理については、Mobi-Kids Study 対象者の過去の受診歴と推定される1990-2010年の国内MRI装置の年次統計情報を主磁場別に概観した。その結果、1.5 T装置は2003年より、3 T装置については2006年より増加しており当該期間について重点的な情報精査が必要と考えられた。文献調査の結果、実測では小児脳MRI後の耳内温及び直腸温は1.5 T装置のスキャン後で0.2度、3 T装置のスキャン後では0.5度(それぞれ中央値)の上昇が確認され、改めて高周波電磁界ばく露の影響の検討必要性が示された。数値計算ではMurbachら及びMalikらの報告で幼児や胎児は大人よりSARが低減していた。ただし、Wangらの解析より大人用コイルで小児MRI撮影がなされる場合、特に新生児ではは胸部撮影であってもコイル内に頭部が収まることにより頭部ばく露が生じうるため、ばく露推定についても頭部MRI検査だけでなく大人用コイルを用いることによる漏洩的頭部ばく露の可能性を考慮したモデル構築が必要であると示唆された。 CTスキャンからのばく露推定については、文献調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRI装置のSAR上限値は患者の電磁界ばく露の程度より決定される操作モードで異なり、ルーチン検査では通常操作モード又は第一水準管理操作モードで運用されている。MRI検査は部位ごとに使用するパルスシークエンスやコイルが異なることからCTで試みられているような部位別のばく露推定は容易でない。MRI検査による高周波電磁界ばく露は、①装置要因、②撮像要因(シークエンス、部位、使用コイル、撮影時間)、③被験者要因に分類される。正確なばく露評価を行うためにはこれら全てについて状況を考慮する必要がある。本研究においてはMRI検査による高周波電磁界の頭部ばく露の推定になるが、頭部MRI検査以外でばく露の考慮が必要な場合についてインタビュー記録から状況を整理する必要がある。医療機器システム白書及び月間新医療(株式会社エム・イー振興協会(東京))より1990年から2010年までのMRI装置の設置・稼働状況を取得し、主磁場強度を1 T以下、1 T、1.5 T以下、3 T以下で分類した。国内のMRI装置は1 Tを除きすべての機種で増加傾向であり、1.5 T装置については2003年頃より、3 T装置については2006年頃より増加していることが示された。このため、当該期間の重点的な情報精査が必要と考えられた。 CTスキャンからのばく露についても文献調査を行い、ばく露量の推定の準備を行った。データクリーニングはIsGlobalで行うこととなったが、作業が遅れており今年度は入手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
CTスキャンとMRIについて数値計算及び測定に関する文献についての文献調査を進め、実測、数値計算による小児におけるSAR推定を確立する。特に、ばく露推定について頭部MRI検査だけでなく大人用コイルを用いることによる漏洩的頭部ばく露の可能性を考慮したモデル構築が必要であると考えられる。また、幼児は表面積が大きいため同一体重をコンソールに入力しても大人より発熱の影響を受けやすいことを考慮に入れ、MRI検査による小児脳腫瘍のリスクを解析する。 2019年度からEPI-CTに関わっているIARCとも共同研究として助言をもらい、データクリーニングを終えたMobi-Kids国際研究のインタビュー結果を整理し、小児脳腫瘍との関連を解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
CTスキャンからのばく露について、IsGlobalのデータクリーニングが遅れているが、文献調査は進めている。2019年度はCTからのばく露についても解析を進める予定である。
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