研究課題
令和2(2020)年度は、篠山研究における採血や生理学検査を休止し、既往歴等に関する追跡アンケートを実施した。過去3年間に調査研究の検査やアンケート(新規の内容と追跡の内容を含む)を実施していない人1,050名を対象とした。追跡アンケートは、7月から2月に市民健診における対面調査および3月に郵送調査により実施した。郵送調査は、対象者のうち65歳以上の未受診者健診予約者に実施した。追跡調査アンケートへの同意率は64歳以下:23%、65歳以上:46%(対面調査46%、郵送調査44%)であった。追跡アンケートの実施にあたって、ニュースレターを発行した。ニュースレターには、調査協力依頼、研究成果報告、慢性疾患予防の重要性などについて掲載し、説明文書等と共に送付した。追跡アンケートの対象でない人にも成果還元の目的で送付した。神戸研究では、5巡目の追跡調査を11月から12月に対面調査により2回、9月以降に郵送による在宅検査を随時行った。2018年度から2019年度の間に収集した検体にて血液凝固・線溶系マーカー(血漿トロンビン・アンチトロンビン複合体、D-ダイマー等)を測定したが、臨床研究報告と比較し、一般住民における検査値の分布は低値に存在した。この分布における高値群との関連要因について検討したところ、男性では推算GFR低値およびHbA1cとの間に、女性では中性脂肪との間に独立した関連がみとめられた。この成果は、日本公衆衛生学会総会(web開催)にて報告した。
4: 遅れている
対面調査は予約人数を制限せざるを得ず、生理学検査を控えていることから、研究調査が充分にできない状態である。衛生管理向上のための労力と支出も必要となった。郵送調査は、事務手続きに課題があり、今年度は一部対象者のみに実施となった。
追跡アンケートについては未実施者を対象に、次年度も継続する。新型コロナウィルス感染症拡大防止のために市民健診の予約人数を制限しなければならない状態が続いているため、郵送調査を本格的に実施する。本課題にて血液凝固・線溶系マーカーと腎機能低下との関連がみとめられたが、臨床研究において慢性腎臓病における血液凝固・線溶系の異常が報告されており、一般住民に多くみとめられる軽度の腎機能低下が血栓リスクと関連する可能性がある。今後、住民コホート開始時から聴取している飲酒状況と、腎機能や検査値の変化との関連の分析に追跡アンケートの結果を反映する。飲酒状況に関する更に詳細な情報は2018~2019年度に聴取しており、凝固・線溶系マーカーとの関連についての分析を進める。
現在、細小動脈硬化指標に関する筆頭著者論文が修正再投稿中である。年度末に修正の指示を受け、論文受理が次年度になることが予想されたため、論文掲載料に充てることにした。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
International Journal of Environmental Research and Public Health
巻: 17 ページ: 5811~5811
10.3390/ijerph17165811
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