研究実績の概要 |
本研究では、地理情報システムを用いて、多目的コホート研究対象者に、対象者個人レベルでのより正確な大気汚染、地表熱曝露を割り当て、その複合曝露と健康影響を明らかにすることが目的である。多目的コホート研究の1990年ベースライン当時の居住地に住み続けている約9万人を対象に研究を行った。1990年から2013年までの追跡期間中、17,838人の全死亡、7,285人のがん死亡、4537人の循環器疾患死亡が登録されている。 大気汚染については、Atomospheric Compostion Analysis Group公開の、1998-2013年の15年間のPM2.5濃度を1kmx1kmの範囲で割り当てた。統計学的パワーの確保を目的に、15年間のPM2.5平均値を曝露とした。しかし、追跡期間中の97年以前の曝露情報がないため、より正確な曝露評価として、1998-2012年の5年間の平均値を累積曝露として用い、2003年から2013年までの追跡で解析を行った。その結果、15年間平均値、5年間累積曝露ともに、PM2.5濃度と全死亡との関連は見られなかったが、循環器死亡と正の関連の傾向がみられた。 黄砂については、Lidarシステムの割り当てがない地域の曝露評価の検討が難航し、衛星データと化学輸送モデルを統合したデータ同化プロダクツを利用する検討を継続している。 地表熱については、Landsat8TIRS、Landsat5TM、気温平年値での割り当て検討を行ったが、地上分解能と観測期間について、個人レベルのより正確な曝露評価の検討を継続している。 本研究では、環境データの対象者レベルへの割り当てが計画よりも難航し、大気汚染・黄砂・地表熱との複合的な評価にあたっては、観測期間と分解能をあわせた上での検討が引き続き必要であるが、複合曝露と疾病との関連を明らかにできるコホート基盤の構築は完成した。
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