研究課題/領域番号 |
18K10118
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
窪 理英子 群馬大学, 医学部, 技術職員 (40747127)
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研究分担者 |
小湊 慶彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205512)
大嶋 紀安 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30360514)
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70455955)
早川 輝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90758575)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脂肪酸代謝異常 / 高度脂肪肝 / 突然死 |
研究実績の概要 |
突然死は心臓血管系疾患、中枢神経系疾患、呼吸器系疾患等の種々の原因で生じるが、高度脂肪肝を伴う例がある。脂肪肝はアルコール摂取、内分泌疾患、薬剤、高度の栄養障害等のさまざまな原因で生じるが、脂質代謝異常により生じる場合がある。特に乳幼児突然死の症例においては、脂肪酸代謝異常を伴う突然死が知られており、臨床ではタンデム質量分析による血清・血漿アシルカルニチンの新生児マススクリーニングが実施されている。一方、成人においても高度脂肪肝を伴う突然死例があり、その原因が不明である例も数多く存在する。我々は、高度脂肪肝を伴う乳児の突然死症例に遭遇し、解剖検査、死後画像検査や病理組織学検査から高度脂肪肝を伴う内因性急死と判断し、イメージング質量分析を用いた脂肪酸解析を行い、その結果に基づいて責任遺伝子を調べ、脂肪酸代謝遺伝子の新規変異を見出した(Takahashi Y, Kubo R,et al. Forensic Sci Int, 244:e34-e37, 2014)。この経験に基づき、さらに高度脂肪肝を伴う突然死例に対して、短時間で集約的な検査を行い、死因を究明するプロトコールを確立することを目標としている。具体的には、高度脂肪肝を伴う突然死例にすべてにおいて、肝臓に蓄積された脂肪酸の解析をメージング質量分析及び液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)を用いて行い、その原因遺伝子の探索を行った。これらの分析方法は臨床で行われている血清・血漿アシルカルニチンより直接的に蓄積している脂肪酸が検出されることが予想され、病因の解明に役立つと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
死後画像検査や病理組織学的検査から脂肪肝が明らかであった症例において、1)イメージング質量分析による肝臓に蓄積している脂質の同定の試み、2)蓄積している脂質に関する情報に基づき、脂肪酸代謝関連酵素の遺伝子解析、3)死者の罹患疾患、服用薬物、体温、死亡前の症状等の情報収集等を実施し、遺伝子解析結果や生前情報の統合に基づき、脂肪酸代謝異常の原因を解明することを予定していたが、今年度は高度脂肪肝による突然死症例がなかった。そこで、内因性急死症例や乳幼児症例を用いて解析を行い、基礎的なデータ収集に努めた。また、高度脂肪肝ではイメージング質量分析に必要な凍結切片の作成が難しい症例が多いため、LC-MSやGC-MSでの分析を優先させた。得られた結果と死因の因果関係を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
高度脂肪肝伴う症例の分析において、肝臓の保存方法がかなり重要でることが結果から示唆された。そのため、解剖から分析までの検体の保存方法を検討する必要がある。また、さまざまな因果関係を検討するために、脂肪肝以外の突然死の症例や年齢や性別などを比較できるようなコントロールの分析も行う予定である。さらに、解剖時に採取された血液からDNAを抽出し、アシルCoA-シンテターゼ、カルニチンパルミトイル基転移酵素I、カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ、カルニチンパルミトイル基転移酵素II等の脂肪酸代謝関連酵素等の遺伝子解析を様々な症例で検討していく。
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