研究課題
突然死は心臓血管系疾患、中枢神経系疾患、呼吸器系疾患等の種々の原因で生じるが、高度脂肪肝を伴う例がある。脂肪肝はアルコール摂取、内分泌疾患、薬剤等のさまざまな原因で生じるが、脂質代謝異常により生じる場合がある。特に乳幼児突然死の症例においては、脂肪酸代謝異常を伴う突然死が知られており、臨床では血清・血漿アシルカルニチンの新生児マススクリーニングが実施されている。一方、成人においても高度脂肪肝を伴う突然死例があるが、原因不明例も数多く存在する。我々は、高度脂肪肝を伴う乳児の突然死症例に遭遇し、解剖検査、死後画像検査や病理組織学検査から高度脂肪肝を伴う内因性急死と判断し、イメージング質量分析を用いた脂肪酸解析を行い、その結果より責任遺伝子を調べ、脂肪酸代謝遺伝子の新規変異を見出した。この経験に基づき、高度脂肪肝を伴う突然死例(6例)に対し、短時間で集約的な検査を行い、死因を究明するプロトコールを確立することを目標としてきた。具体的には、高度脂肪肝を伴う突然死例に全てにおいて、肝臓に蓄積された脂肪酸の解析(イメージング質量分析及び液体クロマトグラフィー質量分析)を行い、その原因遺伝子の探索を行った。また、死後画像検査や病理組織学的検査から脂肪肝が明らかとなった4例に対して、これまでに得られた液体クロマトグラフィー質量分析の結果を踏まえて、脂肪酸代謝関連酵素の遺伝子解析(エキソーム解析)を行った。その結果、脂肪酸代謝関連遺伝子に複数の遺伝子変異が見出された。特に、脂肪肝を伴う成人期突然死の複数例で、同一個人の脂肪酸代謝関連遺伝子に多数の既知や新規の変異が見出されており(未発表)、複数の変異が相乗的に作用して突然死に至る可能性が示された。
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