研究課題
本年度は,Dravet症候群(DS)による突然死した2剖検例について,詳細な病理組織学的検索及び遺伝子解析を行った。病理組織学的検索は,器質的疾患検出のため死因,肉眼所見を問わず刺激伝導系の切り出しを含め常に15ヶ所以上の心臓組織標本を作製し観察を行った。また,その他主要臓器については2ヶ所以上,脳については20ヶ所以上標本を作製して観察を行った。また,遺伝子解析は,心疾患遺伝子及びてんかん関連遺伝子パネルを用いた537種類の遺伝子の次世代シーケンス解析を行った。症例1は,入浴,症例2は呼吸器感染症による体温上昇を契機に発作が発生したことが考えられた。症例1は抗てんかん薬の血中濃度が治療域以下であった。どちらの症例の脳においても,グリオーシスを伴うニューロンの有意な喪失は観察されなかった。形態的に海馬錐体細胞の軽度減少が疑われた.その程度は年齢をマッチさせたコントロールに類似しており今後の検索が必要と考えられる。NGSによる遺伝子解析の結果, 症例1には新規de novoスプライシング変異 SCN1A_c.4477-3T> Cを同定した。さらにこの変異について,mini-gene constructを作製し,スプライシングアッセイを行ったところ,スプライシングサイト直前の2塩基挿入となり,結果的にフレームシフトとなることをが明らかになった。症例2には,新規de novoミスセンス変異 SCN1A_Arg187Proが同定された。また2症例とも,pathogenic variantとして分類されるまれな疾患関連変異体も有していた。最終的な剖検診断を得るために,DSによる予期せぬ突然死についての多面的な検査の必要性を示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
Dravet症候群(DS)による突然死した2剖検例について,詳細な病理組織学的検索及び遺伝子解析を行った。最終的な剖検診断を得るために,DSによる予期せぬ突然死についての多面的な検査の必要性を示すことができた。また,この成果について,論文作成し投稿中であることからおおむね順調に進展していると考えている。
前年度同様,2010~2018年の間に当教室で施行された剖検例のうち,13才以下の原因不明の突然死(Sudden Unexplained Death; SUD)剖検例および遺伝子疾患疑いの未確定例を抽出し,詳細な病理組織学的検索及び次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析行う。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Heart Vessels
巻: 33 ページ: 802-19
DOI: 10.1007/s00380-018-1116-6
Circ J
巻: 82 ページ: 2609-18
DOI: 10.1253/circj.CJ-18-0470
Pediatr Res
巻: 84 ページ: 733-42
DOI: 10.1038/s41390-018-0162-1
http://www.med.u-toyama.ac.jp/legal/publications.html