研究課題/領域番号 |
18K10121
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
武市 敏明 杏林大学, 医学部, 助教 (90460360)
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研究分担者 |
塚 正彦 金沢大学, 医学系, 教授 (00272956)
北村 修 杏林大学, 医学部, 教授 (70266609)
桐生 京佳 杏林大学, 医学部, 准教授 (60555051)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 覚せい剤 / ヒト / 脳 / 蛍光免疫染色 |
研究実績の概要 |
蛍光免疫染色法を用いた法医解剖事例のサンプルの解析は、自家蛍光が高く特に線条体の画像解析が困難なことが研究を進める上の障害であった。そこで、科学的な自家蛍光を抑制する試薬を用いたところ、高いバックグラウンドの原因である自家蛍光が抑制された。一方、同じくバックグラウンドの原因となるリポフスチンの自家蛍光を減弱させるために使用している試薬の作用を軽減させ、リポフスチンの自家蛍光によるバックグラウンドにより解析が困難となり、障害の解消とはならなかった。 そこで、近赤外及び赤外部の波長による免疫組織化学的染色を行った。これにより、法医解剖事例のサンプルにおける自家蛍光の影響だけを低減し、障害の解消に成功した。その為、特に自家蛍光が問題となっていた線条体におけるVguT2シグナルの解析が可能となった。 覚せい剤などの禁止薬物を使用していないと考えられる急死事例の対照及び覚せい剤使用が明らかな覚せい剤事例について、線条体の側坐核におけるVgluT2のシグナルを解析した。その結果、明らかな差は無いように思われた。しかしながら、Calbindin陽性の神経細胞と一致するVguT2のシグナルに限定すると、事例数は少ないものの覚せい剤使用が明らかな事例では増加していることが推察された。また、対照とした覚せい剤などの禁止薬物を使用していないと考えられる急死事例の解析において、側坐核におけるCalbindin陽性の神経細胞と一致するVguT2のシグナルは、死因により差が存在する可能性を認めた。そのため、より厳密な対照の選定が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
濫用薬物において、覚せい剤の中毒死例等の極端な事例については数多く報告されている。一方、濫用薬物である危険ドラッグは、年々その分子種が増加している。そのため、様々な分子種のある危険ドラッグの神経毒性についての研究は、分子種の増加に追いついていないのが現状である。同様な薬理作用を持つ薬物の使用について、分子種を限定せずに明らかに出来る検査の開発は急務である。そこで、刺激性乱用薬物の1つである覚せい剤を用いた動物実験の成果を基に、ヒトへの応用及び、基本的な薬理作用が同様と考えられる薬物使用のスクリーニング検査について、実際の法医解剖例で検査しうる方法の開発を目指す。 本研究において法医解剖例より線条体、黒質、視床をサンプルとして採取した。これらのサンプルに対して、神経細胞やグリア細胞のマーカー蛋白の発現状態を蛍光免疫染色法を用いて解析する。しかしながらこれまでの研究において、法医解剖事例のサンプルを用いた蛍光免疫染色法による解析では、高輝度の自家蛍光による高いバックグラウンドが原因で解析が困難であった。そこで、科学的に自家蛍光を抑制する試薬を用いたところバックグラウンドの自家蛍光は抑制された。しかしながら、リポフスチンの自家蛍光を減弱させる試薬の作用を軽減させてしまい、リポフスチンの自家蛍光によるバックグラウンドが高くなりデータ解析に障害となった。本問題を解決するため、近赤外及び赤外の波長を用いた蛍光免疫染色を行ったところ、自家蛍光の影響をほとんど受け無い画像を得られ解析に成功した。その結果、線条体に位置する側坐核におけるCalbindin陽性の神経細胞と一致するVguT2のシグナルが、覚せい剤使用が明らかな事例では増加していることを推察できる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予想よりも事例数が少ないが、今後も引き続き該当する事例の収集に努める。さらに、対照として予定していた、覚せい剤などの禁止薬物を使用していないと考えられる急死事例の事例内においても差異を認めているため、対照についてのより詳細な解析を行う。具体的には、死因別に解析を行い比較する。又は、死亡に至る背景について出来るだけの区分けを行い、解析することにより、より適切な対照事例の選定条件を明らかにする。
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