研究課題/領域番号 |
18K10124
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小谷 泰一 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20330582)
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研究分担者 |
玉木 敬二 京都大学, 医学研究科, 教授 (90217175)
宮尾 昌 京都大学, 医学研究科, 助教 (90711466)
真鍋 翔 京都大学, 医学研究科, 研究員 (00794661) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳児突然死 / 予防法の確立 / 発症予測モデル / ベイジアンネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では、本来は予防できたであろう乳児の突然死を予防する方法の確立を目指している。そのためには出生後のなるべく早い時期に、それぞれの子どもの突然死発症リスクを予測できる方法を開発すれば、母親などの養育者への育児指導の時に、その子に合わせた予防法を伝えることができ、突然死を予防することに繋がると考えた。そして、人工知能で利用されている数理統計学的手法を用いて、1ヶ月健診などでの問診データなどを入力することで、その乳児に合わせた予防法を提示する乳児突然死発症予測モデルの構築を試みることにした。 そこで、本年度はまず、当施設でこれまでに経験した乳児の解剖例の一部を学習データとして死因分類を実行できるベイジアンネットワークの構築を試みた。最初に、2003年から研究実施日までに当施設で経験した乳児解剖例すべての解剖記録を後方視的に解析した。そして、文献的に乳児突然死のリスクとして知られている要因をそこから抽出し、ワークシートデータを作成した。そしてモデル構築のための学習データとしてその一部を用いた。文献的に知られた要因は月齢・性・出生時体重・在胎週数・睡眠時体位・養育者の喫煙・家族歴等である。最初に、この学習データを構造学習機能を有するモデル構築支援ソフトへインポートし、死因分類を実行する仮のベイジアンネットワークを構築させた。次に、研究代表者による専門的見地から、仮のネットワークが示している通常では考えられない因果関係等の矛盾点に修正を加えた。この際、当初離散化やカテゴリ化した各要因を統合するなどの工夫もした。これにより乳児突然死の死因を分類できるベイジアンネットワークの構築が進行している。 なお、今年度に行った上記のような当施設の解剖記録の後方視的解析から副次的に得られた知見を国際学会で発表したり、招待講演で紹介したりした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、下記に示す3つのstepでの研究遂行を計画している。Step 1:自験解剖例を学習データとしてベイジアンネットワークを構築する、Step 2:文献・医療統計を用いて学習データ数を増加させることで確率分布を更新する、Step 3:新たな臨床症例を検証データとして用いて小児救急専門医がモデルを検証する、の3 stepである。 今年度は上記Step 1の完遂を目指した。このStep 1では計画当初、当施設で経験した解剖例のデータから直接、発症予測モデルの初期段階を構築する予定であった。しかしながら、研究を進めている過程で、乳児突然死の主な4つの死因(予期せぬ睡眠時死亡・既知の疾患・不慮の事故・虐待関連死)に大きな影響を与えるリスク要因を明らかにすることが、発症予測モデルの精度を高めることに気づいた。そこで、症例のデータをワークシート化できた時点で、研究実績の概要に記したように死因分類を実行できるベイジアンネットワークをまず構築することにした。そして、現時点では概ねそのプログラムは出来上がってきた。以上のように、より精度の高い発症予測モデルを構築するために、その前段階として死因分類ベイジアンネットワークの構築を試みたために、当初の計画よりやや遅れている。しかしながら、今年度のこの研究成果は当初の計画を完遂するためにはむしろ必要な研究段階であったと考えられるので、次年度以降の研究をよりスムーズに遂行させてくれると期待している。さらに、今年度の成果のみでも1つの新たな研究成果として発表できる内容の可能性があり、今後さらに深める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究業績の概要や現在までの進捗状況で前述したように、今年度は乳児突然死の死因を分類するベイジアンネットワークの構築を進めたので、まず次年度前半でこれをより精度の高いものに完成させる。今年度は自験例の一部を学習データとして死因分類ネットワークモデルの構築を行ったが、より信頼度の高いモデルにするには文献や臨床統計のデータを利用した方が良いと考えられる。そこで、今年度に構築したネットワークモデルをひな形として、文献や医療統計のデータをインポートすることでより信頼性の高い死因分類モデルを構築する。そして、自験例のうち検証データとして残しているデータでモデルの検証を行い、死因分類ベイジアンネットワークを完成させる。可能ならばこの成果を論文などで発表する。 さらに、この自験例と文献及び医療統計データを用いて構築した死因分類モデルで明らかにされる発症予測に大きな影響を与えるリスク要因を利用して、本来の目的である発症予測モデルの構築を行う。これは、当初の研究計画であるStep 1:自験解剖例を学習データとしてベイジアンネットワークを構築する、Step 2:文献・医療統計を用いて学習データ数を増加させることで確率分布を更新する、の2つの Step に相当するので、これが順調に遂行されれば、今年度の遅れを取り戻せると考えている。
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