研究課題
本研究の最終目的は乳児突然死発症予測モデルの構築である。前年度までにモデル構築に必要な症例データが入力されたワークシートを作成し、仮のモデル構築を実施した。ワークシートには当施設で経験した乳児解剖例ならびに人口動態統計などから抽出した対照健常児群の症例ごとのリスク要因を入力した。そして、ワークシートをモデル構築支援ソフトにインストールすることでまず仮のモデルを作成させ、その仮モデルに専門的見地から修正を加えた。その結果、1)乳児突然死解剖診断補助モデルと2)乳児突然死発症予測モデルの初期モデルを構築できた。診断補助モデルでは予期せぬ睡眠時死亡か否かを専門家診断に近似する段階まで進んだ。また発症予測モデルもこれまで国際的な疫学研究で明らかとなっているリスクと近似するまでに至った。そこで、本年度は1)2)のモデルの精度を高めるとともに別の新たな症例を用いてモデルを検証した。1)乳児解剖例診断補助モデル:多数のリスク要因が影響することで結果的に乳幼児突然死の診断に至るモデルと乳幼児突然死が生じたときにどのリスク要因が強く関係したかを見る2つの異なる方向性のベイジアンネットワークモデルを作成した。そして、これらのモデルについて、新たな複数症例でモデルの精度を検証したところ、7割は専門医診断と同じ診断を最も可能性が高いと判断した。一方で一部は内因死例を乳幼児突然死症候群、また逆に乳幼児突然死症候群例を内因死の可能性が高いとした症例も認められた。2)乳児突然死発症予測モデル:リスク要因を前年度の2つから6つに増やしてモデル構築を実施した。その結果、発症予測に影響するリスク要因が児の月齢によって異なること、ある2つのリスク要因の有無によって児の月齢には関係なく発症予測リスクが約10倍上昇することが初めてわかった。なお、上記の研究結果については現在論文投稿準備中である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
PLOS ONE
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