研究課題/領域番号 |
18K10127
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
木下 博之 香川大学, 医学部, 教授 (00284357)
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研究分担者 |
田中 直子 香川大学, 医学部, 講師 (60700052)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メトヘモグロビン / 陰イオン / 亜硝酸イオン / 硝酸イオン / 塩素酸イオン / イオンクロマトグラフィー |
研究実績の概要 |
メトヘモグロビンは、血液の赤血球中のヘモグロビンの酸化により生じる。メトヘモグロビンは酸素との結合能がないため、血中のメトヘモグロビンが著明に増加した際には、末梢組織では著明な酸素不足に陥る。法医学の領域では、化学物質の摂取による中毒の際に、しばしば血液中のメトヘモグロビンが増加することがある。特に亜硝酸塩などの酸化作用のある化学物質の摂取によりメトヘモグロビン血症をきたすことがある。法医学実務では、中毒の重症度評価の際には摂取した物質自体の濃度測定が求められることが多いものの、亜硝酸塩などのイオンは測定法が限られており、直接測定した報告は少ない。そこで、導入したイオンクロマトグラフ装置を用いて、これらのイオンの生体試料からの分析法の確立について検討した。 本年度はまず、分析対象とした硝酸イオン、亜硝酸イオンについて、溶液中の濃度測定法について検討を進めた。その結果、導入した装置を用いた溶液中濃度の測定が可能となった。そこで、現在は動物を用いた病態モデル作成と、それらの試料への応用について検討を行っている。試料の前処理についてはやや課題もあるが、実務応用を念頭に作業を進めている。 さらに、メトヘモグロビン血症をきたしやすい化学物質について、毒性と併せてMetHb濃度についても検討するため、オキシメータを用いたメトヘモグロビンの濃度測定の有用性についても検討を進めた。その結果、従来に比べより簡便な手法によりメトヘモグロビン濃度を得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陰イオンの毒性を評価する方法として、本研究では濃度測定法の確立を念頭に検討を行っている。試料の処理などに関してはまだいくつか課題もあるが、同時にすすめていたメトヘモグロビンの評価法に関しては、従来の分光学的方法に比べ、より簡便なオキシメータの有用性について明らかにすることができ、新しい知見も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、実験動物を用いた中毒の病態モデルを作成する。オキシメータを用いた、より簡便なメトヘモグロビン評価法が確立できたことで、病態モデルの有用性についても、メトヘモグロビンの生成の程度から容易に評価することが可能となったため、今後の検討がさらに進むことが期待される。 また、先に検討した硝酸イオン、亜硝酸イオン以外の陰イオン化合物、たとえば塩素酸塩や臭化物などについても、測定法の検討を進める予定である。対象とするイオンの中には、比較的分解の早いものもあり、これらの評価についても検討が必要であると考えている。
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