メトヘモグロビン(MetHb)は、赤血球中のヘモグロビンの酸化により生じる。MetHb自体は酸素との結合能がないため、様々な要因で血液中のMetHbが増加した場合には、末梢組織では酸素不足に陥る。MetHbは、健常人の血液中に約1-2%程度存在しており、様々な病態において増加する。酸化剤などの化学物質の摂取による中毒の際にも、血液中のMetHbが増加することがあり、その程度によっては組織の酸素不足から死亡に至る場合もある。そのため、中毒の病態や重症度評価にMetHbを指標とするが、法医学的には、中毒の原因究明が求められる。ただ、原因となる物質によっては、体内での分解が非常に早いものや、分析方法が煩雑なものも少なからず存在する。そこで、本研究では、これまでに比較的報告の少ない陰イオン化合物を中心に、イオンクロマトグラフを用いた、血液や尿などの生体試料からの測定法の確立と病態メカニズムの解析とその評価を行ってきた。 本年度は昨年、一昨年に引き続き、硝酸イオン、亜硝酸イオンの生体試料からの分析について試料の前処理に関して検討を行なった。また、塩素酸、次亜塩素酸についても検討をすすめ、法医学実務への応用について一定の方向性を得た。さらに、リチウムなどの陽イオンへの活用についても検討をすすめている。 また、MetHbに関して、オキシメータでその血中濃度の評価を行うが、オキシメータの法医学的応用に関連して、さらにデータを取りまとめて発表した。
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