【材料と方法】5週齢の雄性C57BL/6マウスにEtOH 1 又は3 g/kg(E1およびE3群)を1回腹腔内投与し、15分、1時間、2時間および5時間 (各n=3)経過後に脳下垂体、顎下腺、肺、肝臓、腎臓、副腎および脾臓を採取した。TaqMan MicroRNA Assayにより各臓器中miR-9、miR-15b、miR-21およびmiR-335の発現量を、生理食塩水を投与した対照群と比較した。E1群は更にEtOH投与の12時間および24時間後におけるmiR発現量も観察した。なお、miR発現量の経時的変動の有意性の有無はt-検定を用いて判定した(有意水準:p<0.05)。 【結果と考察】E1群では、miR-9の発現量変化が最も顕著で、脳下垂体、肺、肝臓および副腎において、EtOH投与後早期から発現量が著明に増加し、その後対照群よりも減少する傾向が認められた。また、脳下垂体、副腎および脾臓では、EtOH投与12時間後以降に再び増加傾向を示した。miR-15b、miR-21およびmiR-335はmiR-9に比して各臓器における発現量変化は乏しかったものの、EtOH投与後の5時間または24時間後に発現量の増加や減少傾向が認められた。E3群では、肺、肝臓、腎臓、副腎および脾臓のmiR-9、miR-21またはmiR-335において経時的増減が観察された。E3群はE1群に比して、肺、肝臓、副腎および脾臓のmiR-9においてEtOH投与15分から1時間後に発現量が減少し、5時間後には増加傾向を示したが、その他のmiRの変動に有意な差は観察されなかった。軽度乃至中等度酩酊に相当するEtOH投与量で複数の臓器においていくつかのmiRの発現量に明瞭な経時的変動が認められ、miRは飲酒証明の新たな指標として期待できると考える。
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