研究課題/領域番号 |
18K10132
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
柿崎 英二 宮崎大学, 医学部, 准教授 (70284833)
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研究分担者 |
園田 愛 宮崎大学, 医学部, 助手 (10762122)
新川 慶明 宮崎大学, 医学部, 助教 (40625836)
湯川 修弘 宮崎大学, 医学部, 教授 (30240154)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 法医学 / 溺死の診断 / プランクトン検査 / Papain / 蛋白質分解酵素 / 珪藻 / Proteinase K |
研究実績の概要 |
溺死体にみられる死体所見の特徴として泡沫や肺水腫などが挙げられるが,これらの所見は頚部圧迫による窒息や薬物中毒,心不全の場合などでもみられることがある。そのため,世界的には溺死の診断は除外診断に基づいてなされているのが一般的で,溺水の吸引そのものを積極的に証明するための労力はあまり費やされていない。しかし一方で,水と共に体内に入った水中の微生物を肺やその他の臓器,血液等から検出することで積極的に溺水の存在を証明しようとする検査法もある。その方法として壊機法によるプランクトン検査が最も信頼されているが,この方法は操作が煩雑な上に安全面や設備面で多くの問題を抱えている。そこで,我々は強酸を用いずに安全かつ簡便・迅速に行える新しい検査方法の開発に取り組んだ。これまでの研究成果から,植物性蛋白質分解酵素Papainと界面活性剤SDSを用いてブタの肺や腎臓,肝臓を完全に溶解可能な至適条件を決定した。さらにこの開発した新しい手法を用いて,実際の水中死体20例に対して検査したところ,肺については従来の方法と比較して,組織の溶解力はやや低下したものの,本来肺組織に含まれる珪藻の数は充分に多いため,問題なく検査に利用できた。一方,腎臓や肝臓についても従来の方法より溶解力は低下したもののほぼ完全に組織を溶解できた。ただし,検査の労力や時間,費用等総合的に考慮すると,腎臓や肝臓を溶解する場合は従来の発煙硝酸を用いて組織を完全に溶解する方が好ましいと考えられた。さらに本研究を通じて腎臓や肝臓に含まれる珪藻の数は従来広く言われているよりずっと少ない可能性も示唆された。また検査を行うにあたり,最も注意すべき事として試薬類に元々含まれている珪藻によって生じ得るコンタミネーションが挙げられた。以上の結果から本研究によって確立したPapainによる安全かつ簡便・迅速な珪藻検査法は法医実務で役立つことが示された。
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