研究課題
深部静脈血栓症(DVT)は今後さらに増え続けることが予想され,それに伴い,剖検時に深部静脈血栓が発見される例や,その血栓が死因や死後経過時間推定に重要な意味を持つ場合も増えることが予想される.本研究課題では,実験用マウスの下大静脈を結紮して作成したDVTモデルを用いて①アクアポリン1,3による新たな血栓陳旧度判定指標の確立,②アクアポリン1の動態の血栓器質化の進行程度の評価への適用,等に重点を置いて研究を推進した.対象としては,下大静脈結紮から1,3,5,7,10,14,21日後の血栓を用いた.血栓の断面組織標本について,抗アクアポリン1,3抗体それぞれを用いた免疫組織化学的染色像から陽性細胞数を計測し,これらの血栓内における動態を評価した.すでに人体におけるアクアポリンの動態は様々な疾患との関連が明らかにされている.腫瘍細胞遊走と脈管形成ではアクアポリン1が重要な役割を担っており,アクアポリン1の発現を阻害することが癌進展を阻害する可能性が報告されている.また唾液の分泌や血圧,急性脳水腫,椎間板変性,アルツハイマー病との関わりも重要である.本研究課題により,アクアポリン1及び3の深部静脈血栓における局在や動態と,血栓陳旧度との関連性を明らかにし,血栓陳旧度判定のための新たな指標の有用性が示唆された.血栓断面積に占めるアクアポリン1陽性領域は急性期(3日まで)には70%以上に達したが,亜急性期(5~10日)には40%前後に減少し,さらに慢性期(14日以降)には20%以下だった.アクアポリン1により,血栓陳旧度と器質化の程度を検索可能であることが分かった.一方,血栓中のアクアポリン3陽性細胞数は時間経過に伴い徐々に増加し,10日目で最多となり,その後減少した.血栓内マクロファージの発現と関連していることが示唆されると同時に,血栓陳旧度が推定可能であることも明らかになった.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件)
Int J Legal Med
巻: 135 ページ: 301-305
10.1007/s00414-020-02323-y
巻: 135 ページ: 547-553
10.1007/s00414-020-02482-y
巻: 134 ページ: 1061-1066
10.1007/s00414-019-02168-0
Nat Commun
巻: 25 ページ: 5994
10.1038/s41467-020-19763-0