研究課題/領域番号 |
18K10137
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
副島 美貴子 久留米大学, 医学部, 講師 (80279140)
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研究分担者 |
神田 芳郎 久留米大学, 医学部, 教授 (90231307)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ABO式血液型 / 分子進化 / 転写制御 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
ABO抗原は最もよく知られている血液型抗原であり、ヒトでは赤血球のみならずさまざまな組織に認められる。しかしながら、その発現パターンは、ヒトに近縁の哺乳類ほど多くの組織に認められることが示されており、意外なことに赤血球膜表面にABO抗原が存在する生物種はヒトと類人猿に限られている。 ヒトの赤血球でのABO抗原の発現をコントロールしているH酵素をコードしている遺伝子であるFUT1には、3つの転写開始点と選択的スプライシングによって作られるさまざまなcDNAが、組織特異的、発生段階特異的に発現しており、各転写開始点の上流域はいずれも転写活性を有していることが分かっている。また、赤血球系細胞の分化によって転写開始点は下流側に変化し、組織特異的、発生段階特異的なFUT1の発現が独立した3つのプロモーターによって制御されている。3つのうち、上流から2つ目のプロモーターには、37 bpのミニサテライト、Alu配列、Long Terminal Repeat (LTR)といった繰り返し配列が挿入されており、転写開始点はLTR中に存在している。 当該年度は、なぜ、ヒトと類人猿でABO抗原が赤血球で発現するようになったのか、その分子メカニズムを明らかにするために、組織分布が異なる動物種間のプロモーター配列との相違に着目し、それを足掛かりにして赤血球での発現に必須な候補領域について、赤血球系の様々な分化度の細胞株を用い、ゲノム編集技術によって、候補領域の1つである2つ目のプロモーター内のAlu配列のノックダウンを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FUT1の赤血球での発現に重要であると考えられるAlu配列を潰すために配列特異的なgRNAを合成し、血球系細胞株に導入するため、リポフェクションをおこなったものの、導入効率が悪く、目的の配列がノックアウトされたクローンが得られなかった。 次年度では、当該研究費により、エレクトロポレーターを購入し、実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前項に記載のように、エレクトロポレーターを導入することで、リポフェクションでは比較的効率が悪いとされている浮遊系のさまざまな分化度の血球系細胞へのgRNAの導入をおこない、ノックアウト細胞を作製し、これらについて転写産物や、遺伝子産物であるH酵素の産物であるH抗原の発現の確認をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
既に述べたように、ゲノム編集によるターゲット配列のノックアウトがうまく行かなかった為遅延が生じ次年度使用が生じたものである。次年度では、機器備品としてエレクトロポレーターを購入する費用に充てる。
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