研究実績の概要 |
2020年度は,転倒リスクを予測するための身体認識の誤差測定法の看護師による評価者間一致性を検討した.3種類の身体認識の誤差測定方法を用いて,健康若年者15名を対象として,3名の看護師による測定を行った.身体認識の誤差測定方法は,上肢挙上距離,下肢挙上距離,下方前方リーチ距離について,運動距離の予測値と実測値の差とした.距離は,それぞれに起点と到達点を設定し,測定軸に沿って推定到達地点と実際の到達地点についてレーザー距離計を用いて計測した.分析は,SPSSソフトウェアを用いて記述統計量とICCを算出した.対象者に方法と自由参加について説明し,同意書をもって承諾を得た. 結果は,参加者は全員女性であり,年齢は平均20.9歳(±0.99),身長の平均は159.7 cm(±5.80),体重の平均は52.6 kg(±4.8)であった.上肢挙上距離の平均は-0.11 cm (SD±0.33),下肢挙上距離の平均は-0.16 cm (SD±0.75), 下方前方リーチ距離の平均は-0.03cm(SD±0.13)であった.3名の看護師による上肢挙上距離のICCは.735(95%CI:0.375,0.906),下肢挙上距離のICCは.761(95%CI:0.446,0.912),下方前方リーチ距離のICCは.806(95%CI:0.428,0.935)であった. 3種類の身体認識の誤差測定法は,看護師3名の測定の結果,高い評価者間一致性を認めた.今後の課題は,妥当性と臨床での活用可能性を高めるために,転倒および転倒要因との関連因子の関係性を検証していくことである.これらの研究を通して,転倒予防を目的とした看護師用の身体認識の誤差測定法の妥当性と信頼性が確認できた.
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